たんぺんしゅう

□キミ
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恋した子は男の子。
華奢な体つきに大きな瞳、長い睫毛。ほかに女なんて沢山いるのに、なぜだかコイツ。
今日は寝坊したのか、髪の毛はペッタンコだ。外を眺める伏し目も良い。

「なんだよ」
「いーや、なんでもなかよ」
「変だな、仁王は」
「そうか?」


問い掛けにきまじめに頷くのも愛しい。
こんなことばかり考えている俺は気が狂ってしまったんじゃないかと、自分のことながら思った。
男女共に友達の多いコイツは独占するには困りものだ。
周りの女子は顔さえ良ければ群がり、近付きにくい空気がある。
この気持ちは、満たされないままに。
なんで。なんでコイツは男なのだろうか。なんで女ではなく男なんだ。何度もなぜこんなことなんかで悩むのか考えたが、答えはいつも恋をしているにたどり着く。


「にお……仁王!!」
「……お…おう、なんじゃ」
「やっぱり最近変だよな。ぼーっとしてんじゃねー。そんなんだと、また真田に殴られんぞ」

ケタケタ笑いながら恐らく真田を真似て低い太い声で「たるんどる!」とか言って、俺の肩を軽く叩いた。
ぼーっとしている原因はおまえなのに、気付いていない。気楽なもんだよな


「おまえは、好きな奴おるんか」
「なんだよいきなり…」
「いや、な。おるんか」
「いない、けど。仁王は?」

逆に質問されて、答えられない自分がいる。
ここでコイツにの本当のことを言ったら、どんな顔をするだろうか。
人生は、賭けてなんぼじゃ


「俺は、おまえが好きだ」

びっくりした顔している。
それも良い。
その瞳、その顔は何を思っているんだろうか。

「ばかやろう!びっくりしたじゃねーか!!俺も、仁王のこと好きだ!…トモダチ!だろ」
「あ…あぁ、トモダチ。な」
「じゃ、俺用事あるから。部活頑張れよ〜」


ひらひらと手を振って走っていく。俺はその後ろ姿を眺めることしかできない。
この恋は誰に知られることなく、消えてしまったほうがいいんだろう





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