たんぺんしゅう

□口述
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毎朝駅のホーム、反対側にいるただでさえ人の目を引く銀色の短髪、おまけに長身の男の子は登校という名の変哲のない日常に、銀色というより桃色の彩りを加えてくれた(なんて乙女ちっく)。


電車が来るまでの時間。ほんの数分だけど、とっても短い数分(授業が終わる数分前はあんなにも長いのにね)
その数分だけ彼を見ていることができる。
私のちょっとした楽しみ。

いつも大きなテニスバックをしょって電車を待ってる。
目が合う気がするのはおめでたい乙女妄想。
第一私はそんなに目が良いわけじゃない


私側のホームの電車が来るほんの数秒前、誰かに手首を掴まれて。
私の手首を握る人物は息をきらしている。
私が振り返ると銀色の短髪、大きな背の男の子。私の手首を握らないもう片方の手にはこの間無くしたと思っていた、ハンカチ。

彼が言った言葉は私の体を動かなくした。否、動かせなくした。
そして私を乗せずに電車の扉は閉まる。






「ずっと見てました」
(遅刻は確実だな、そう思ったある朝の一大事。)





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