わたルド2

□私と童貞貴公子
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「時に淳くん。ドーテーと言われて、男は悲しむものなのかい?」

部室で座りながらキュッとハチマキを巻く貴公子に、下ネタを提供する私。
普段はハチマキ巻いてないから、部活の時だけしてるとなんとなくしまって見えるあっちゃん。
普段からハチマキしてたら嫌だけどね。

「…?なんだよ、いきなり」

特に驚いた様子はなくて、ただ普通に不思議に思ったんだろうと言うような感じで逆に質問してくる。

「いや、なんとなく」
「んー…わかんないや。僕は別になんとも思わないし」
「あー、思わなそー」

両肘をついて貴公子の方を向いてケラケラ笑う私と、つられて何故か微笑むあっちゃん。
こんな団欒した雰囲気の中、私の頭に一つ疑問が浮かんだ。

そもそも貴公子はドーテーなのか…?

き…気になるっちゃ気になる…。いや、でも童貞だろう。ん、間違いない。…でも最近の若い子ってお盛んだから…もしかしたらってことも……だいたい淳は2年からこっち(聖ルドルフ)来たわけだし、それ以前に千葉のおなごとそのようなことがあったのかも…!?
え!なんかやだ!そんなのあっちゃんじゃない!!!

「あっちゃんの破廉恥!!」
「は?」

恐らくアヒルくんが忘れていったんであろう、ビニール製の黄色いアヒルのおもちゃを淳に投げつけてやった。
すると見事に貴公子の結びたてのハチマキに当たり、貴公子は一瞬目を閉じ怯んだ。
くそう、貴公子め。
やっぱり奴には裏があると思っていたんです、私!!!
それがこんな形で明らかになるなんて!!!もう私、淳さんの目を見て喋れない!!
店長は絶対に「汚らわしいです><聖ルドルフの名に相応しくないですよ、木更津破廉恥くん!」とか言うに決まってる。うん。
我ながら適切な店長の台詞を当てはめられた。
てゆーか木更津破廉恥ってなに(笑)
これだから店長はみんなにバカにされ

「クスクス…痛いじゃないか」
「は…っ!!」

妖艶の貴公子は口角を上げ微笑みながらも、笑っていないその鋭い目で前髪の間から見えた。
そ…そういえば私、あっちゃんに手を出したのは初めてかも…!!こんなに怒るなんて…!

「だって!!あっちゃん、ドーテーじゃないから!」
「…?あぁ……」

淳さんは何かを思いついたのか、いきなりいつもの表情に戻り…というか、何となくあまりよろしくないことを考えているときの顔で私に本当に微笑みかけた。

「僕は童貞だよ。うん、」
「あ…あれ?」
「まぁ、今現在のコトの話だけどね……クスクス」
「今現在…?」


怪しく笑いながら距離を縮めてくる貴公子に状況を把握した私は、赤いハチマキをずり落として奴の視界を奪って逃走した。



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