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新婚さんいらっしゃい1−アベミハ編−
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「頑張って…作…る」
阿部くんは優しく頭を撫でてくれた。それだけで幸せ。
最後に
「くれぐれも手にケガだけはすんなよ」
と言ってくれた。
 阿部くんからキッチンの使い方とか聞いてから、俺は始めた。

一生懸命作った。
阿部くんにおいしいと言われるように頑張った。
お母さんに聞きながら何度も作ったから自信はある。はずだったんだけど…。
「あれ…。おいしく…ない…」
 出来たばかりのキンピラを味見してみたら、昨日作った時となんだか違う。おいしくない。肉じゃがも、じゃがいもがべちゃべちゃしていて、味も薄い。簡単なはずの、お味噌汁も沸騰し過ぎて豆腐がぐちゃぐちゃになってしまった。
どうしよう…。
こんなの阿部くんに食べさせられないよ…。頑張って作ったのに…。
「ふッ…ヒック…。」
泣きながら俺は作った料理をゴミ箱に捨てようとした。すると突然、阿部くんがキッチンをの覗いて来た。
「出来たか?」
思わず捨てようとしたキンピラを後ろに隠した。
「おい!何隠してんだよ。見せろ」
あっ…。取られちゃった。
「キンピラじゃん。うまそ〜」
確かに見た目は上手くいったけど…。
阿部くんはそのキンピラを、手づかみで一口食べちゃった。またダメピだって思われちゃう。
「うまいじゃん。早く食べようぜ。俺、腹減ってんだよ」
ううっ…。
阿部くんは優しい。
俺は泣いてばっか。
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