長編連載
□君の笑顔を守りたい
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白いご飯にはほとんど手をつけず、4品のおかずも全て残っていた。
「もう少し食べたら?」
俺はかなり心配になって泉に再び箸を持たせようとしたが、泉は小さく「もう…無理…」と呟いた。
「じゃぁさ、他に食べたい物とかある?」
なんとか食べ物を口にして欲しい俺は必死だった。
「プリン…なら…」
少し考えた後、泉は言った。
「じゃっ俺、下の売店で買ってくるから」
そう言って俺はエレベーターで一階まで降り、コンビニより規模の小さな売店でプリンを探した。
しかし生憎売り切れだ。
「しょうがない…コンビニ行くか」
泉はここ最近ずっと気分がすぐれなくて、毎日吐き気や頭痛に襲われていた。だから泉の口から「プリン」という言葉を聞いた瞬間、びっくりしたと同時に嬉しかった。
今日の夕食もほとんど手をつけなかったからプリンでもいいから食べて欲しい。
薄闇の中、俺は病院から2、3分程度のコンビニでプリンを買って病室へ戻った。
思ったよりも時間が掛かってしまった。
泉、怒ってるかな…?
俺は小走りに廊下を急ぎ、勢い良く扉を開けた。
「遅くなってごめ…」
看護婦が片付けてくれたのか、机の上にあった夕食のトレーは綺麗に片付けてあった。
いや、そんなことより、俺の目に飛び込んできたのは真っ赤に染まったタオルだった。