長編連載
□断絶ロジック3
2ページ/48ページ
学校に着いて、授業を受けて…。
叶はいつもと変わらない日常生活にホッとした。
しかし、織田とは上手く話せないでいた。極力、いつものように…と心掛けたつもりでも、放課後まで必要最低限の言葉しか交わさなかった。
途中、畠に「ケンカでもしたのか?」と聞かれたが、叶は上手くかわした。
今日一日クラスの皆の視線が痛かった。いつ誰が、昨日の叶の恥態を話すのか、いてもたってもいられない。
しかし、そんな緊張も野球をやっている時だけは忘れられた。辛くても、やりきれなくても、それでも野球だけは大好きで、白球を投げている瞬間は無になれた。
忘れたい。昨日のことや、織田のこととか…。
叶が部室で着替えようとしていたら、畠が慌てた様子で飛び込んできた。
「監督がインフルエンザで倒れたって!!」
叶を含めた部員たちの顔色が 一瞬で引き締まり、そして、次にはどよめきに変わった。
「おい…。練習どうすんだよ!!」
「ずっと筋トレとか、ぜってぇ嫌だよ?」
皆口々に文句を言っている。
それを畠が一喝した。
「おい!!うるせぇぞ!!静かにしろ!!今、うちの学校はインフルエンザで学級閉鎖が4クラスあるらしい。で、今日から無期限で部活は禁止だってよ」
えっ…。
叶の顔が白くなってゆく。
唯一自分に残された逃げ道だったのに今、この瞬間に断たれてしまった。
カダガタと身体を震わせる叶の様子を見ていた織田は、すーっと隣によって叶の耳元で囁いた。
「これでたくさん、遊べるやんなぁ」
叶は絶望に暮れる自分の行く末を見つめて目に涙を浮かべた。