過去の拍手お礼小説
□拍手お礼小説21
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太陽が傾いて、西陽が教室に一本の筋のようになって射し込む。
その眩しさに窓際の生徒がカーテンを閉める。
授業は後半にさしかかり、黒板には英単語がびっしり書き込まれていき、生徒たちはそれを必死にノートに写していく。
田島も途中までは写していたが、だんだんと目がくっついてくる。
あくびも止まらない。
「あ〜眠い…」
声に出してみるとさらに眠気は倍増した。
毎日朝練のため、四時半には起きている。
昼休みに少し寝たといっても6時間目にはやっぱり睡魔に襲われる。
田島は大きなあくびを一つするとチラリと三橋を見た。
すると三橋も田島と同じようにうつらうつらとしていてノートをとっているようには見えなかった。
はぁ…。
早く部活に出たいな…。
田島は眠い目を擦ってノートにシャーペンを走らせたが記憶はそこで途切れた。
「田島〜部活はじまるぞ」
ポコッとノートで頭を叩かれて、田島は目を覚ました。目を開けると泉と三橋が目の前にいた。
「HR中もずっと寝てたぜ」
田島は口の端についた涎を手の甲で拭うと、荷物を持って教室を出た。
部室に行くと花井や阿部が先に着替えていた。
「花井〜!!」
田島は花井を見つけると背中に抱きついた。
大きな背中は自分だけの場所だ。
「田島!!降りろって!!うっとおしい!!」
花井は照れ臭そうに背中から田島を振り落とすと、スパイクを履いて先にグラウンドへ行ってしまった。
田島は「ちっ」と口の中で舌打ちすると、つまらなそうな顔でユニホームに着替えた。
「おつかれ〜」
陽が落ちて、辺りは真っ暗になり、部員たちは皆着替えて帰っていく。
「花井〜!!帰ろうぜ」
ユニホームから着替えた田島は後ろから花井を抱き締めた。
「日誌書き終わったらな」
抱きついても素っ気ない返答の花井に田島はしょんぼりとしたまま、素振りをしたり、グローブを磨いたりしたが落ち着かない。
大好きな、大好きな花井と二人きりなのだ。
「終わった?」
ペンを机に置いた花井に田島は日誌を覗き込んだ。
花井独特の字で、ノートは二頁にわたって埋められていた。
すげぇ…。
田島は何でも完璧にこなしてしまう花井を尊敬しているし、凄いとも思う。
だけど…。
不安になる。
全部一人で抱え込んでいつか壊れてしまうんじゃないか。
田島はもっと自分に頼って欲しかった。
「田島、帰るぞ」
花井は素早く片付けをして、帰る準備をしていた。
「おい、田島?」
花井が田島の顔を覗き込むと、田島はすかさず花井の唇にチュッとキスをした。