過去の拍手お礼小説
□拍手お礼小説4
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「加具山さん、今月の24日って部活ないじゃないっスかぁ。予定なかったら遊びに行きませんか?」
加具山の背中に、突然榛名の声が響いた。
ちょうど部活が終わり、汗だくの身体をタオルで拭きながら、部員たちは皆、くだらない話をしながらダラダラと着替えていた。
「別に…いいけど…」
加具山は、突然の榛名の誘いを深く考えずに返事をしていた。
しかし、榛名は加具山の返事にぱっと嬉しそうな顔をすると、はにかんだように笑った。
その榛名の笑顔があまりにも可愛くて、加具山はドキッとしてしまった。
練習で疲れた身体を引きずるようにしてそれぞれが部室をあとにした。
加具山も、みんなに別れを告げ、いつもと同じ道を通って帰っていった。
日はとっぷりと暮れ、年の瀬も押し迫る今日この頃は、吹く風も冷たく、コートとマフラーだけで凌ぐには少々辛かった。
「手袋と耳当て欲しい…」
小さく呟いた言葉は、白くキラキラと光って空気に溶けていった。外気にあたり冷たくなった手をコートのポケットに突っ込んで少し早足で歩いた。
ポケットに突っ込むと必ず榛名に怒られた。
「大事な手ですよ!!もっと大切にして下さい。」
その何度も言われた言葉が耳の奥で何度も反復する。
今日もどこかでこっそりと見ていて、突然出てくるのではないかと思ってしまう。いや、もしかしたら自分はそれをどこかで期待しているのかもしれない。
幼い子供が、構って欲しいからとわざとイタズラをするように、榛名に注意をしてほしいが為にわざとしているんではないだろうか?
加具山は、自分の奇妙な思考を断ち切るかのように、全力で走ると、息を切らしながら家へと向かった。