過去の拍手お礼小説
□拍手お礼小説5
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「じゃぁな」
「あぁ、また明日な」
いつもと変わらない言葉を交わして学校からすぐの家へと向かう。吐く息が白く濁って暗い夜道に溶けていった。
田島は、途中の公園で足を止めた。花井と二人でよくこの公園に通ったことがついこの間の出来事なのに、遠い過去のことのように感じる。あまり言葉を発しない花井から少しでも話が聞きたくて、まくし立てるようにくだらないことをたくさん話した。
大好きで、大好きで、どうしたらこの気持ちは伝わるのだろうか?いくら言葉で伝えても、花井は笑ってはぐらかすだけだ。
田島は、何かに期待したり、ねだったりその事に正直疲れていた。頭の中ではいつも「どうせ叶わない」と警告のように流れる。けれどもしかしたらと期待してしまうのは、少しでも花井の気持ちが自分にあると思いたいからなのかもしれない。
人の気持ちを計りにかけた時、この気持ちだけはどんなものにも負けないと、胸を張って言えたはずなのに、だんだんと田島の心の中で、冷たく、氷のように固まってしまった。田島が好きだと言う度に困った顔をする花井の顔が目の前に浮かんでくる。
泣きたくなるような気持ちを無理やり抑えつけて、ゆっくりとした足取りで歩き出した。
冷たい風が、隣を通り抜けていった。