長編連載
□君の笑顔を守りたい
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『微笑みを強さにかえて』後編
俺は覚悟を新たにした。
どんな泉を見ても大丈夫。
泉を支えてあげられる存在になる。
それを胸に誓った。
「泉〜体調どう?」
いつものように、丸椅子に座って何気なく聞いた。
今日の泉は昨日よりも顔色が良くて安心した。
「昨日より楽かな…」
少し照れ臭そうに笑って泉は俺を見る。
元気そうで良かった。
「もう少しで中間テストだよなぁ…。それまでに退院出来るのかな…」
窓の外からは西陽が差し、それは呟いた泉の頬に降りかかった。
「まぁ退院出来なかったとしても特別にやらしてくれるよ。あっこれ今日の分のノートな。汚くてゴメン」
泉のために出来ることをしようって決めてから最初にやったのが、ノートをとること。
普段授業中は寝てばっかだったけど、今は結構必死だ。
泉のために何かしている時だけ、少し救われる気がする。
けれどそれも自己満足に過ぎないのかもしれない。
結局は、泉の苦しさは他人には解らない。
俺は解っているつもりでいるだけだ。
「泉くん、夕食です」
6時になる5分ほど前にノックと同時に看護婦が配膳台に乗せた泉の分の夕食をトレーごと目の前の机に乗せた。
量は全体的に少し少なめだったが、おかずは4品で結構おいしそうだった。
「いただきます」
泉は箸を持って、ほうれん草のおひたしや、ゴマ豆腐などの消化に良さそうなものを一口、二口と口に運んだが、白いご飯にはなかなか手をつけず、ペースも上がらない。
「おいしくない?」
「別に…おいしいよ」
泉はそう言ったが、途中で箸を置いた。
「ごちそうさま」
「もう食べないの?」