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□構って!
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「ねー」

「なに」

「いつまでこのままなんでしょう」

疑問を飛ばす私が居る場所は、クールビューティ月島くんの腕の中。
ここに1時間程軟禁されております。
しかもただ抱きしめられてるんじゃなくて、ベッドに座った月島君の長い足の上に跨り、向かい合って乗ってる方。

「さあ」

「いやいやさっきも同じ答えだったけど」

「ふうん」

「いやいやいや」

興味なさそうに言う月島君は、私を抱きしめつつ雑誌を見るという暴挙に出ている。
抱きしめられてから、さっきから私の視界は壁しか映っていないぞ。
抱きしめられてるのは嬉しいけど、これ非常につまらない。

「構ってーって言ったの悠デショ」

「そうだけどもー」

さっきまでは構って欲しくて、雑誌を読む月島君の周りをうろうろしてたけどさ?

「なんかやだ」

「なにが嫌なの」

相変わらず目が合わないまま、月島君が言う。

「月島君の顔が見れない事とか?」

月島君の肩に乗せていた顎を離して、月島君の顔を正面からじっと見て言ってみる。

「そう、邪魔なんだけど」

対するクールビューティは一つ溜め息を吐いてそう言った。

「ええ…きっとそう来ると思ってましたよ…」

元の場所に顎を戻して、こちらも溜め息混じりに八つ当たりでぎゅうぎゅうと月島君に抱きつく。
力一杯抱きしめてるのに、表情一つ変えないで雑誌を見続けているのは何故だ。私が非力だからなのか。

「…ここだけ読んだら構ってあげるから」

不意に大きな手に頭を撫でられたと思ったら、耳元で告げられる言葉。

「え、本当?」

「本当」

「やった!待つ!」

月島君の大きな左手に頭を撫でられながら、待つこと数分。
頭を撫でられて幸せに浸っている私は、この後物凄く後悔する事を知らない。

「はい終わり」

ばさり、と雑誌がベッド横のテーブルへと落とされる。

「じゃあ構って!さあさあ!」

その音を聞いて、ぱっと月島君から離れて顔を見上げる。

「…あ、れ?」

「なに?」

見上げて見えた月島君の雰囲気に危機感を覚えた。
なんか、あれ?なんていうか危険な香りがするんだけど…?

「なんか嫌な予感がうわあっ!」

「もう遅いよ」

それを伝えようと口を開くが、途中で視界がぐるりと代わって今度は天井とご対面。
背中にはさっきまで座ってた月島君のベッド。
あ、月島君の良い香りが!はっ、じゃなくて!

「あああなになに何で押し倒すの!どこにそんな必要性があるか簡潔に述べていただきたい!」

「構ってあげようと思って」

「いやいやもっと軽めで良いんですけど!」

不健全ですー!とばたばたもがく私をがっちりと押さえつけて月島君が呟く。
ちくしょう手が大きいな月島君!片手で私の両手を拘束するとは!動けないじゃないか!

「ふうん、今日は黒なんだ」

「ぎゃ!ちょ、いやああなに見てんの!」

「悠が暴れるから見えるんだけど」

「そんな馬鹿なっ!」

何で今日スカート選んだんだ私!と脳内で過去の自分を全力で平手打ちしていると、ぎしりとベッドを軋ませて月島君が体勢を変える。

「う、」

「…何、照れてるの?」

私を押さえつけたまま器用に私の太腿辺りに跨って、完全に私が動けなくなった所で月島君が私のすぐ目の前にその綺麗な顔を持って来て言う。近い近い近いですって!
未だに月島君と至近距離で見詰め合うのは苦手だ。
照れるんだもの!月島君が格好良過ぎるのが悪い!

「だだ、だって」

月島君格好良いんだもの…!と顔をそらしたまま言うと、(嗚呼、今絶対顔真っ赤!)月島君の動きが止まった。

「…?」

不思議に月島君の顔を見上げると、目が合う前にバッと横を向いてしまった。
だけど、その耳は真っ赤になっている。

「あれ…耳赤い?」

「うるさい」

「え、え。かっ、可愛い…」

「…へえ?」

バツが悪そうに言ってくる月島君につい笑いながら言うと、カチンと来たらしい月島君に噛み付くようなキスをされた。

「んん、っは…」

口内を好き放題蹂躙され、解放される頃には抵抗する気力を全部持っていかれてしまった。
へろへろになった私の、ブラウスのボタンに手を掛けた月島君が爽やかに告げる。

「じゃ、嫌って言う程構ってあげるよ」

それはもう珍しく笑顔で言うから、その笑顔に打ち抜かれた私は大人しく食べられる事にしました。


構って!
後悔先に立たず

(まあ、嫌って言っても止めないけど)
(あれなんか不吉な言葉を聞いたなあ!?)

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