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□雨宿り
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「うーわー」
部活の片付けが終わって、さあ帰ろうと思ったら夕立と鉢合わせた。
どしゃああ、なんて音と共に大粒の雨の弾幕が目の前に広がり、私はどうしようもなくその場に立ち尽くした。なんという事だ。
「傘、持ってきてないんだよなあ…」
天気予報め、今日は一日快晴って言ってたじゃないか。
夕立なんて聞いて無いぞ!
「あーあ、雨止むまで待つしかないかな…」
ただ玄関に立ち尽くしてるのもなんだし、部室戻ってスマホでも弄ってよっかなあ。
そう思って踵を返すと、前方の廊下から見知った後輩がやってくるのが見えた。
「あ、悠先輩」
「あれ、二口くん先に帰ったんじゃなかったっけ」
「ちょっと部室に忘れ物したんスよね」
ほら、と掲げられ、ちゃらりと鳴ったのは何やら可愛い猫のキーホルダーが付いた鍵。
「お家の鍵?」
「そうっす、にしても夕立凄いっスね」
「本当。おねーさんはこれから雨宿りしなくちゃいけないのさ…」
ざあざあと地面を抉る大粒の雨を見ながら二口くんが呟き、私の返答を聞いた二口くんが私に向き直って訊いた。
「あれ、先輩カサ持ってないんすか?」
「持ってないー」
「俺持ってますよ、相合傘で良ければ入ります?」
「凄く魅力的なんだけど、土砂降りだよ」
「土砂降りっすね」
この土砂降りだったら、傘が有っても無くても変わらないと思うなーと言うと、二口くんも苦笑いで頷いた。
「二口くん、一緒に雨宿りしようか」
「そうしましょうか」
二口くんと雨宿り
二人きりの静かな部室で
(あ、小降りになってきた)
(じゃあ、今度こそ相合傘で帰りませんか)
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