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□帰り道
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名前変換あんまり無いですごめんなさい
夜8時、静かな川辺の道に三人分の足音が響いていた。
「いやー、送ってもらっちゃって悪いねー」
「いやいや、先輩女の子なんですから1人で夜道は危ないっスよ」
「…」こくこく
歩いているのは、遅くまで練習をしていたバレー部の青根と二口、3年生でマネージャーの悠。
悠は暗いから、という理由で2年の2人に送られて帰路についていた。
「疲れてるのにありがとね」
「いいえー。青根が居れば不審者とかも寄って来ませんし」
「あー、確かに来ないだろうねえ」
「…!…」
その強面なら、意気込んで出て来た不審者の方が裸足で逃げ出すだろうと思いながら呟くと、隣を歩いていた青根が悲しげに頭を垂れていた。
「ああ!ゴメン青根くんそんな落ち込まないで!大丈夫慣れると平気だから!」
「先輩それフォローになってないっスよ」
なんとか機嫌を直してもらおうとする悠に、右隣を歩いている二口が突っ込みをいれる。
「いやでもほら、青根くんが送ってくれたら凄く頼もしいし安心出来るし、」
「!」
「青根くん背は高いし格好良いし優しいし!おねーさん大好きだよ!だからほら、えっと、機嫌…直してくれないかな…」
「…!」こく
悠が何とか青根の機嫌を直す事に成功すると、やりとりを見ていた二口が口を挟んだ。
「えー先輩俺はー?」
「え、二口くんも格好良いよ?女の子にモテモテでしょ?」
「…」こくり
思ったままを口にすると、二口は横に首を振った。
「いや、そんなにモテないっスよ」
「えー?おねーさん知ってるぞ!今日のお昼休みに中庭の隅で3年生の女の子から告白されたという事を!ちなみにその子はフられて泣きながら退散したことも!そして昨日は1年生の子に告白されていたという事も」
「なんで知ってるんすか」
中庭は校舎からは若干見えづらい位置にある為、そこまで詳細な情報を出された二口は疑問符を頭上に浮かべた。
「屋上から見てた。二口くん!って女の子の声が聞こえたものでつい」
「…?」
「あれ、屋上って立ち入り禁止で鍵掛かってませんでしたっけ」
「…」こくこく
「あー。おねーさんどういう訳かマスターキーのスペア持ってるんだよねーなんでだろー」
私がポケットに入れていた鍵をちゃりんと鳴らしながら掲げて二人に見せると、それを見た二口くんがにんまり笑う。
「わー先輩悪い子ー」
「…」こくこく
「雨でも降ってない限り、これ使って屋上でご飯食べてるんだー」
そう呟くと、二口くんが訊いてくる。
「え、じゃあ明日行っても良いっすか」
「Σ!」
「勿論いいよ。一緒にお昼食べる?青根くんも一緒においでね」
「!」こくこく
頷く青根くんを見ながら、この子はおっきな小動物だわ…とほんわかしていると、二口くんがそういえば、と疑問を投げかけてくる。
「先輩いつも一人で飯食ってるんスか?」
「いや、茂庭くんとか鎌先とかはよく一緒にご飯食べてるけど」
「Σ!!」
「…先輩、とりあえず茂庭サンは良いとして、鎌先サンはどれくらいの頻度で一緒にご飯食べてるんです」
「週3くらいかなあ」
「…青根、明日から昼は屋上。いいな」
「…!」こくこく
「なーに話してるのー?」
こそこそと話している青根と二口が気になって訊くが、二口が笑顔で首を振って誤魔化した。
「なんでもないっすよー」
「…」こく
「そー?」
「そうです、気にしないで下さい」
「…」こくこく
「じゃあ気にしないで、明日が晴れる事を祈っとく」
「晴れると良いっすね」
「…」こく
明日の降水確率何%だったかな、と考えていた時に、ふと思いついた事を二人に聞いてみた。
「ね、明日のお昼、私が作ってきてあげようか」
「!」
「え、手作りですか」
「簡単なので良ければね。二人と屋上でご飯食べる記念にでもどお?」
「マジすか!是非!」
「…!」ぶんぶん
全力で喰い付いて来た二人に苦笑しつつ、明日のお弁当を作る事を約束する。
「わかった。おねーさん頑張って作ってくるから、楽しみにしててね」
「滅茶苦茶楽しみにしてます」
「…!」こくこく
「じゃあ、スーパー寄っても良いかな?お弁当の材料見に行きたいんだけど」
「勿論いいっす。荷物持ちでもなんでもしますよ」
「…」こく
「ありがと。じゃあ進路スーパーに変更!」
「りょーかいっす」
そうして両脇を背の高い二人に挟まれながらスーパーへと向かう道すがら、明日のお弁当はちょっと豪華にしようと心に決めた。
部活帰りの道で
青根と二口に送られる
(あ、先輩ハンバーグ食べたいっす)
(…!)
(りょーかい、任せてー)
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