ONEPIECE
□拍手
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キッドさん家のハロウィン。
秋島の近くを航海しているときに、それは始まった。
『トリックオアトリィイイトォ!!』
『ぎゃああぁあ』
『うわああぁ』
『やめろ、助けてくれえ!』
突如響き渡る声に、キラーとキッドが船長室から飛び出した。
「何だ、敵船か!?」
「…いや、周りに船は見当たらない」
瞬時に辺りを警戒する二人。
だが、敵船などは見当たらなかった。
二人が怪訝に思ったとき、すぐ下の甲板から悲鳴が上がった。
「菓子なんて持ってねえよ!!」
「悪戯決定!その槍ピンク一色にしてやろう!」
「ちょっと待て!早まるな!ああぁ!」
「あ?」
「…そういう事か」
キッドが甲板を見下ろして、間抜けな声をあげる。
一方キラーは騒ぐ声で大体を察したようだった。
「ハロウィン?」
「みたいだな」
キッドとキラーが甲板を見つめる。
そこには、菓子を持っていなかったであろうワイヤーが、その自慢の槍を茶髪の少女に奪われていた所だった。
ちなみに、ワイヤーの周辺では他の屈強な船員達が三つ編みやらツインテールにされているという地獄絵図が出来上がっていた。
「あ!キッド、キラー!」
槍をペンキで見事なピンク一色に染め上げた少女がこちらを振り向く。
槍をワイヤーに放り出し、(ワイヤーは既に崩れ落ちて嘆いていた)二人の方へと駆け寄ってくる。
「トリックオアトリート!」
ニコニコしながら少女が両手を差し出して言う。
「ちょっと待ってろ」
キラーはキッドを残して自室へと向かった。
「…菓子が無いとどうなる」
「え、なにキッド持ってないの?」
「違う、無かったらどうかるか聞いてるだけだ」
「えーと、七三分けにしようかな」
「マジかよ…!!そこで待ってろ!」
バターンと音を立てながら船長室へキッドが消える。
と、同時にキラーが戻ってきた。
その手には沢山のカラフルなお菓子が詰め込まれているバスケットがあった。
「ほら、これをやろう」
「わ!ありがとう!キラーは毎回ちゃんと準備してるね」
「無かったら大変な事になるのが分かっているからな」
少女はさっそくキラーから受け取ったお菓子の中からキャンディを一つ摘み、口の中へと放り込んだ。
「ん、おいしー」
イチゴ味のキャンディを口の中で転がしていると、なんともいえない暗いオーラを纏ったキッドがゆっくりと船長室から出てきた。
「お、キッド来た」
「…あの様子だと菓子は無かった様だな」
「みたいだね。キラーちょっとこれ持ってて」
「わかった」
少女はキラーにバスケットを渡し、キッドに近づいていく。
「トリックオアトリート☆」
にこーっと笑う眼前の少女。
対するキッドはだらだらと冷や汗を流し、目は左右にうろうろしている。
これが三億越えの賞金首の姿か!
「わ、悪ィ…探したんだけどよ」
「良いんだよ、無かったら悪戯ですから!さあさあ、そこに座って」
若干挙動不審なキッドを他所に、少女は満面の笑みを見せたまま、すぐ近くの木箱を指差す。
「つ、次の島で何でも好きなモン買ってやっから…!」
「 座 っ て 」
「はい」
笑みに何か黒い物が混じった少女に、すぐさまキッドは指定された木箱に座る。
「じゃあお客さん、今日一日これで居て下さいね」
にっこにこしながらキッドの髪を梳かし始める少女に、キッドは今日だけは敵船に遭遇したくないと強く思った。
ハッピーハロウィン!
無事なのはキラーだけ
(来年は忘れねェぞ…!)
(わ、キッドが知的に見える。眼鏡かけさせよう)
(今年も凄い船になったな…)
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