貰い物たち

□幸せの足音
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如月さまへ捧ぐ!



「……さっきから、何だ」

静雄は心底迷惑そうに言って、足を止めた。
そして、振り返る。

「デートしよ?」

臨也はにっこり笑う。

「一人でか。可哀相な奴だな」
「知ってる?デートって二人でするものなんだよ。ああ、そうか。皆シズちゃんを恐がって近づいてこないから。だから知らないんだね。じゃあ仕方がないね」
「黙れ死ね」
「折角俺が可哀相なシズちゃんのためにデートしてあげる、って言ってるのに」
「いい迷惑だ。迷惑ついでに今すぐ土に還れ」

そう言って踵を返そうとしたが臨也に肘を掴まれ 、仕方なく静雄は歩みを止めた。
明らかにイライラした様子だ。

「何だよ?」
「シズちゃんは、俺とデートしたくないの?」

真っすぐに見つめてくる臨也から逃れるように静雄は視線を彷徨わせた。

「…………別に」

嫌じゃない、そう呟いた言葉は小さかったが臨也の耳にはしっかり届いていた。

「シズちゃん可愛い」
「うっせ、黙れ」
「そういうところも可愛い」
「………男に可愛いとか言うな。寒いだろ」
「いいよ、本当のことだしね」

まったく話が通じない。
しかし、案外嫌がってはいない自分がいることに静雄は気付き、そして嘆息した。

「勝手にしろ」
「うん」

静雄はまた歩き始める。
臨也は今度は並んでついてくる。

「手、握っていい?」
「聞くな」
「うん」

笑顔の臨也が眩しくて、熱い頬を隠すように静雄はただ前だけを見つめていた。
恥ずかしい。死にたいくらいに。
今なら殺されてやってもいいと半ば本気で考えていると右手に臨也の手が触れた。指を絡め取られる。

「…臨也っ」
「ん?」
「手………」
「ああ……、大丈夫。誰も見てないよ」
「そうじゃない」

縋るような静雄の視線を受けて臨也は首を傾げた。ぱちり、と2・3度瞬きそして何か納得したように声を上げた。

「シズちゃん、………もしかして緊張してる?」
「は」
「緊張してるでしょ」

臨也の指が静雄の前髪を掻き上げた。

「俺もしてるもん」

口を挟む隙もなく柔らかい感触を額に感じて、静雄は素直に眼を閉じた。今はこの空気に浸っていてもいいかもしれない。唇に移った熱が離れて、相手の気配も離れていった。

「シズちゃん、好き」
「本当に恥ずかしいから、やめろ。頼むから」

睨まれる。
しかし口ではそう言っても、決して手は放されなかった。

繋いだその手が愛しくて。幸せを噛み締めながら、二人は池袋の雑踏の中に紛れていった。

















――――――――――
Thanks for reading & 300 Hit

大変永らくお待たせ致しました!
『臨静ならなんでも』ということだったので初々しいお二人をイメージしてみました
偽物の気もしますが…(´`)

遅くなってすいませんでした!
 
――――――――――
お礼!
 
こ、こんなに素敵な小説を、ありがとうございました!
 
生涯大事にします!
 
マジでありがとうございました!!
 
如月
 


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