献上の間
□限りある一夏
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緑豊かな熊野にも夏の終わりがやってくる。
今日もまた一つ、動かない蝉を見つけた。
「七日程度…なんだってね」
ヒノエが不意にそんなことを告げる。と、そこには一匹の動かなくなった蝉がいて
「もしも、お前と出会えて七日しか一緒にいられないとしたら…オレはお前と何を望もうか」
【限りある一夏】
何を望もうか。
何故、そんなことを突然この人はいうのだろう。
この足下に転がる蝉を見て、センチメンタルになったのか。
違う時空の二人だからこそ、こんな話になっているのだろうか…。