見参!

□子供の事情。壱
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ぱっと起き上がった政宗は、窓辺に駆け寄った。
ライトが消され、エンジン音が消えた。


「政宗っ急げ!」

と言う慶次の声で、バタバタと帰り仕度を始めた。
それを、幸村はポカンと眺めていた。

からからとベランダの戸が開いて、男が姿を現した。

「遅くなりました」
「できた!」

言うが早いか、政宗は仕度を済ませて慶次の前に気をつけをした。

「良く出来ました!」

と頭を撫でて、慶次は政宗を小十郎へ促す。

「片倉さん、お勤め御苦労さん!政宗偉かったぞ〜!今まで幸村と遊んでやってくれてたんだよな〜」
「そうか。政宗様、良かったですね」
「Hey、小十郎!奴が幸村だ!」
「いつも政宗様と遊んでくださっている?よく話を聞くぜ坊主……お?」

政宗は幸村の手を引っ張り、小十郎の前に差し出した。
キョトンとした幸村は、小十郎の顔を見るなり、慶次へ抱き着いてしまった。

「どうした?ん?」

慶次に頭を撫でられても、離れようとしない。
それどころか、更に引っ付いてしまった。

「申し訳ない先生。俺の顔を見て泣かないだけ有り難い」
「あぁ、なるほどね。」
「幸村〜No problemだぜ!小十郎はな、恐ぇ顔してっけどすっげぇ優しいんだぞ?」

政宗は幸村の頭を撫でてやった。
確かに、頬に傷を携え、恐持ての面構えだが、目尻は下がり優しい表情をしている。

いつも幸村がぐずった時は、政宗に撫でられれば機嫌をよくする。
それでも、今日は顔を慶次から離そうとしない。
政宗も困ったように小十郎を見上げた。

「政宗様、仕方ありません。ごめんな坊主」

小十郎は膝を付いて、幸村を撫でようとした。
その時、ピクッと幸村が動いて、小十郎の車の向こうに目をやった。
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