見参!

□二人の事情。14200リク
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「まだ寝てなかったのか」

布団に包まってはいるものの、ウトウトしながら佐助は必死に起きていた。
生乾きの髪を掻き上げて、小十郎はソファの肘掛けに座る。
オレンジの髪を撫でれば、布団の中の蓑虫は、気持ち良さそうに瞳を閉じた。
すぐに寝息が聞こえてくる。
それを確認して、デスクのパソコンに向かった。
残っていた仕事を片付けるため、暫くキーボードの音が続いた。


気付けば日付が変わってさらに夜が深くなる。

「ふぅ…」

目頭を押さえながら、パソコンの電源を切った。
一瞬部屋が真っ暗になるが、ベッドサイドのルームランプに目が慣れてくる。
小十郎が冷たいベッドに滑り込むと、ソファの上でモゾモゾと布団が動いた。

「…どうした」

顔だけを出した佐助が、こちらを見ている。

「…そっち、行っていい?」
「起こしちまったか?」

小十郎が布団を持ち上げると、にっと笑った佐助は待ってましたとばかりに、滑り込んだ。

「えへへっ」
「あったけぇな…」
「…ん」

擦り寄って来た佐助を抱き抱えるように、小十郎は暖を求める。


セミダブルのベッドが狭いわけではない

ただ
冷たいシーツに堪えられなかっただけだ


そう自分に言い聞かせて、小十郎は佐助を抱きしめる。

「…猫は、ご主人をあっためる湯たんぽなのさ…」
「確かに…違ぇねぇ。」
「拾ってくれて…ありがとう、片倉さん……」

腕の中で佐助は小十郎を見上げて微笑んだ。
どちらともなく、その唇に自分のを重ねた。
何度か啄んで、少しだけ深くなる。

「ッ…ん、は」

何も考えてはいなかった。
自然と無意識に、ただキスという行為をしただけ。

「…っ、あったまった?」

恥ずかしそうに頬を染めながら、佐助は小十郎の胸に顔を埋めた。






俺の心を奪うつもりなのか

そんなことされたら、俺はもう




ペットなのに

猫なのに














ペットなら

猫ならよかったのに




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