見参!

□二人の事情。14200リク
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「やっぱイケメンだねぇ」
「…お前は猫か?」
「そう見えるんならそうじゃない?」

雑居ビルのひび割れた壁に座り込み、ラブホテルの看板に寄り掛かって、小十郎を見上げていた。
オレンジの髪がネオンを浴びてキラキラしている。
今時の服装に、髪型。
渋谷にでもいそうな普通の若者だった。

ひとつ違うのは。


「俺様お金ないんだけど、遊んでくんない?」


その声だった。


「娼婦…いや、男娼ってやつか。」
「ん〜そんな感じでいいけど?」

喋り方も声の出し方も、まさしくそれだった。
風俗経営に手を出した時に、何人もの娼婦を見てきた小十郎の勘である。

「悪ィがその気はねぇ」
「なくてもいーよ。」
「そいつぁ矛盾してんな、男娼さんよ」

誘っておいて何もしない娼婦がどこにいる。
溜息を吐きながら、小十郎は少し拗ねた男を見下ろす。
立ち上がって尻を叩き、小十郎の顔を覗き込んだ。

「…佐助。俺様の名前ね!お兄さんは?」
「名乗る程のもんじゃねぇ」
「何それ、ヤクザさん?」
「違っちゃいねぇが…てめぇに名乗る筋合いがねぇってだけだ」
「……片倉…って、さっきの恐そうなお兄さんに呼ばれてたっ」

ニッと笑い、楽しそうに小十郎の回りを回る。
ますます猫のようだ。
勝手にしろと吐き捨てた小十郎に、しがみつく。

「やった!」

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