見参!
□情事の事情。伍
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「あのさ、旦那…」
幸村に告げるべきことを渋る佐助に気付いて、政宗は幸村の手を取った。
「俺たちと一緒に住むのは嫌か?」
「まさむねどのと、こじゅろどのとでござるか!?わーい!!」
「決まりだな。」
「え…早…」
子供は子供同士で話すのが一番だねと、佐助は安堵の溜め息を漏らす。
見上げた小十郎も、苦笑していた。
嬉しそうに走り出す子供たちを見て、小十郎は転ばないように注意した。
「そうだ、お前に言おうと思っていた。」
「ん?何?」
保育園の遊具で遊ぶ幸村と政宗を眺めながら、小十郎は車のキーを弄ぶ。
「これから一緒に住むってことはだ、家族みてぇなもんだろ。」
あぁ家族かぁ…と呆ける佐助の横顔に、小十郎はふっと鼻で笑った。
「だから、一々借りるって言うな。弁当箱もベッドもキッチンも、全部だ。」
「え?でも…」
呆れたように溜め息を吐いた小十郎は、少し真剣な眼差しで佐助を見る。
その視線に困って、佐助は泳がせた目を子供たちへと向けた。
「気ィ遣われると、俺が困る。」
その声音が少しだけ戸惑っているのを感じた。
「お待たせ致しました。」
調度良くまつの声がかかって、佐助は腰を上げた。
「お話って何でござりましょう?」
「コレ、新しい住所のメモ。俺様たち引っ越すの。」
「まぁそうですの?」
いつもの笑顔でメモを受け取ったまつは、その住所に首を傾げた。
視線を上げれば、恥ずかしそうに微笑む佐助と、我関せずと政宗たちを見つめる小十郎がいる。
「伊達殿のご住所?」
「実は、あのアパート取り壊されることになってね。色々あって、政宗君ちにご厄介になることになりました!」
「まぁ!政宗さんと幸村さん、とても仲が宜しいから心配ござりませぬわね!」
あっはは〜と頭を掻く佐助の向こうで、小十郎は分が悪そうにキーを回していた。
夢じゃないよね?
幸せを掴んだんだよね?
これでいいんだよね?
夢にまで見た幸せの家族が
今
始まる
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