見参!

□情事の事情。伍
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広い湯舟の片隅で、佐助は膝を抱えて座っていた。
湯は白濁色だからそうしているのは見えないが、口元まで湯に浸かっているのを見るとそう見える。


「さっきはシャワーだけだったんだろ?んな縮こまってんなよ」

「んむーブブブ」

「ガキか」


対角線側で、小十郎は踏ん反り返って笑っている。
湯船は、大人二人がゆったりと入れる程に広い。
今度は4人で入ろうと、縮こまったままの佐助は、困ったようにぶくぶくと湯の中で息を吐き出した。

「テメェは後悔してねぇんだろ?」

ブクッと空包が出る。
ならいいじゃねぇかと言い捨てた小十郎は、手を延ばして佐助の前に拳を作った。

「何…?っうわ!」

きゅっと手に力を入れると、そこから湯が飛び出して佐助の顔を直撃した。


「片倉小十郎特製手鉄砲受けてみろ!」

「ちょっわっブッ」

「ハハハッ」

「うぉ!ん!」


逃げ場所の無い佐助は、小十郎の胸に飛び込むしかなかった。
佐助の体を抱きしめた腕は、少しも揺るがない程強く感じた。


この腕の中なら、俺様はワガママを言えるのかもしれない

「…後悔してねぇんだな?」

耳元で、もう一度囁かれる。
疑問になっていても、その口調はNOを許さない断固なものだった。



「……好きだよ、小十郎さん…」

「やっと返事が聞けたぜ。」

「あれ?俺様言ってない?」

「聞いてねぇ」


ゴメンの台詞を唇が奪い取っていく。


「謝るんじゃねぇぞ、他の男に抱かれたことは気にしちゃいねぇ。」

「え?なんで?俺様すげぇ悩んでたのに…」

「そいつぁ…これから」


キョトンとした佐助の頬を捕まえて、おでこをくっつけた。
しっとりと汗ばんできた肌が、気持ちいい。







「俺以外に、感じねぇ体にしてやるからさ。」





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