見参!
□情事の事情。伍
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夢だけど夢じゃなかった
夢だったけど夢じゃなくなった
ずぶ濡れのTシャツを脱ぎ捨てて、小十郎は服を着たまま俯く佐助に苦笑した。
「着衣風呂でもする気か?」
「…怒らない?」
恐る恐る呟きながら、佐助は服を脱ぐのを躊躇った。
首元から胸元にかけて散った鬱血が、オレンジの髪に見え隠れしている。
最後のボクサーパンツを残して、ごめんなさいと呟いた。
「あのさ…」
「これから抱く体が、違う男に抱かれたばかりだからか?」
「ッ…気付いてたの?」
ふっと笑った小十郎は、佐助に背を向けて服を脱ぎ、何も言わずに風呂場に入って行った。
言い出しにくいことは先に言ってくれる
そうして欲しいことをしてくれる
それが小十郎の優しさだと、佐助はすぐに気が付いた。
そんな佐助に、嫉妬や憤りは感じない自分を小十郎は笑った。
分かりやすい奴だ、俺もテメェも。
小十郎はシャワーを出しながら呟く。
シャンプーを泡立てたところで、外気が背中に当たった。
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