見参!

□佐助の事情。四
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ふと目を覚ますと、枕元の時計はそろそろ正午を指そうとしていた。
寝ぼけ眼のままリビングへ向かう。

「小十郎さん?」

車のキーはあるし、コーヒーメーカーもかけたばかりだ。
でもその姿だけがない。
風呂の音はしないし…どこだ?

その時、カタンと頭上から音がした

「え?なに?」

そういえば風呂場の横に階段があったような。
とすれば上?でもここ最上階だし。
考えながら階段を登ってみると、小さな玄関のようになっていた。
ドアの前に小十郎さんのスリッパがある。
そこにあったサンダルを借りて、ドアを開けると同時に思い出した。







『秋茄子の収穫、手伝ってくれるならな』






余りの眩しさにひとつ大きく瞬きをした。
緑の葉が一面に萌えているかと思った。

「すげぇ…」

心の底から出たみたいな声に、自分で驚いた。
だってこれはすげぇもん。
ビニールハウスのでっかいのみたいな?
とにかく、屋上全体がビニールに包まれているような感じだった。

奥の方でガサガサ葉が揺れている。


「小十郎さーん」

「ん?…起きたか」

ひょっこり小十郎さんの顔が覗いた。

「すげぇこれ…」

「そこら辺が全部茄子だ。こっちがアスパラとニラと長ネギ、あそこら辺が人参大根あとは…」


まぁ勝手に見てくれと、面倒臭そうに言い放った。
まだ俺ん中じゃ驚き終わらなくて、突っ立ったまま全体を眺めた。
家庭菜園って域、裕に越えてるし!
驚きっぱなしだよもう。


「もう終わるから待ってろ」

「うん。」


美味しそうな茄子に見取れながら、出入口の壁に寄り掛かった。

















え、カチ?





ウィーン?

















そこに付随していたスイッチに気付かなかった。
小さな機械音が聞こえる。






「ねぇ、このスイッチ…」

「げ!馬鹿野郎!」

「うわぁっ!」








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