見参!
□家庭の事情。参
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それぞれの家庭には、それぞれの事情がある
「チカっ!」
アパートの自室を通り過ぎ、ふたつ隣。
元親の部屋のドアを勢いよく開けて、佐助は駆け込んだ。
両手で顔を覆っていた元親が、無言のまま書類を佐助に差し出す。
退去命令
一、事業拡大に伴う下請け工場の整理
一、古い社宅の改築と社員用マンションの建設…
紙一枚につらつらと理由という名の言い訳が書かれていた。
このボロアパートは元親と佐助達しか住んでいないから、そうなるのは至極当たり前のことだと言われればそうだ。
「どうすんだよ、佐助…小っせぇ幸村だっているんだぞ?」
「チカだって」
「俺ァ自分の身一つだしよ、どうにでも…」
「そんなこと言ったって金ないっしょ!?知ってんだからね!」
元親には離れて暮らす子供がいる。
稼いだお金は、はした金だけ残し、殆ど仕送りをしていた。
「信親君、来年小学校でしょ?盛親君だって…」
「幸村と同い年…」
「それなら尚更じゃん!俺様なんかのことはいいから、自分のこと考えろよなっ!」
「考えてねぇ訳ねぇだろうがよ!」
どうしてこんなことになってしまったんだろう
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