見参!

□大人の事情。弐
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夕飯にしようと話していたらしく、結局、佐助がハンバーグを作った。
小十郎はスープとサラダを作った。
それを四人で食べて、佐助が後片付けをしている内に、小十郎が子供たちを風呂にいれた。

「寝ちゃった…?」
「あぁ。起こすのも可哀相だし、泊まっていってくれ」
「えっ俺も?」

ベッドの上で遊んでいた声が聞こえなくなったかと思うと、仲良く寝んねしてしまったらしい。
佐助も泊まることにして、風呂を借りた。
パジャマの代わりにと置いてあったジャージとTシャツは、少し大きい。

あ、小十郎さんの匂いがする…


「今日は助かった。」
「こちらこそ〜!あんなにはしゃいでた旦那を見たのは久しぶりだったしっ」
「ここからは大人の時間だな」

微笑みながら、小十郎は佐助にワイングラスを差し出した。

「どーも。あ、じゃあ俺、何かツマミ作ろっか?」
「そうだな、頼もうか。」

任せて!と立ち上がり、キッチンへ向かう。
リビング側にカウンターがあり、小十郎はそこの高椅子に座った。

「んーそうだねぇ…トマトもらうよ〜」
「構わねぇ。好きに使ってくれ」
「んじゃ、遠慮なく。」

佐助が冷蔵庫を漁っていると、ポンッと気持ちいい音がしてワインの香が漂った。
その香を肴に、佐助はトマトとモッツァレラをオリーブオイルで絡めた。

「はい、どーぞ」
「こういった洒落たものが作れるとはな」
「トマトがめちゃめちゃ美味しそうだったからさぁ」

小十郎はふと笑って、小皿に取り分ける。

「ほう、目も確かだ。」
「ん?」
「俺が作った野菜だからな…」
「えぇ?マジで?」
「屋上は全部畑になってる。」
「まじで!?すげぇー!後で見せてくんない?」

テンションの上がった佐助は、ワクワクしながら小十郎の隣に座った。

「秋茄子収穫手伝ってくれるなら」と言うと、佐助は間髪入れずに良い返事をした。
笑いながら乾杯をして、辛めのワインを口に含んだ。
小十郎はツマミを上手い上手いと頬張る。
それに伴いワインも進み、気持ちいい程度に酔いが回ってきた頃、佐助はふと思い出した。



「あ、ねぇ今日旦那…幸村大丈夫だった?」
「最初は怖がっていたが。」

やっぱりと頬杖を付いて溜息を吐いた。

「しばらくして、この傷を恐る恐る触って痛くない?と聞かれた。」
「え?」
「大昔の傷だしな、痛かねぇと答えたら笑った。それからは慣れてくれた」
「…そっか。ごめんねぇ…」

複雑に微笑んだ佐助は、グラスのワインを飲み干したそれを眺めながら、小十郎はすまなそうに言う。


「…理由、聞いていいか?」


何も言わずに佐助は、顔にあったふたつの絆創膏を剥がした。


















そこにあったのは生々しい傷痕だった



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