見参!

□大人の事情。弐
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「…デッカ……」

殴り書いた住所にあるマンションを見上げて、佐助はだらし無くポカンと口を開けた。
何度もメモを見返した。
確認しても確認しても、その住所に間違いはない。

「あの〜」

防犯の為か何なのか、表札など名前の分かるものはなく、受付のような窓口がひとつあるだけだった。

「すんません、伊達政宗君のお家は…」

窓口の上には警備室と書かれていた。
確かに覗き見える奥に、沢山のモニターがある。

「真田殿かの?梵から聞いとる!今開けるからの〜」

警備員の制服を着た老紳士が、これでもかというほどの鍵の束を持って出てきた。
名札には北条と書かれている。

「正面の、え〜すかれた?えべれーたじゃったかの?あれに乗って15階じゃ」
「あ、ありがとうございます」

ニッコリ笑って、腰を叩きながら戻っていった。
でかい自動ドアを抜け、明るく広いエレベーターホールを抜ける。
ボタンを押して待っていると、右手にあったエレベーターのドアが開いて人が出てきた。

「…ども」

反射的に会釈をすると、その人は立ち止まり佐助をまじまじと見た。

「そのエレベーターは最上階まで停まらんぞ。」
「えっマジで!?」
「お客人、どちらに行くか?」
「あぁ、伊達政宗君んちって…」
「ならばそれでよい。」

お礼を言う間もなく、その人は去って行った。
なっ何だ?住人かねぇ?変わった人もいるもんだ…

ドアが開いたエレベーターに乗り込む。
確かに、15と開閉のボタンしかなかった。
次にドアが開かれた時、佐助は驚愕に倒れそうになる。
どうやら最上階は、ワンフロアーらしい。

意を決して、チャイムを押した。



『はい』
「あの〜」
『どうぞ、お待ちしていました』

インターフォンから聞こえたのは、低くて優しそうなあの声。
パタパタと音がしたかと思うと、ドアが開いた。

「佐助!Welcome!」
「政宗君っ、と旦那〜」
「さすけぇー!」

腕を延ばしてドアを開けていた政宗の後ろで、幸村がぴょんぴょん跳ねている。
おじゃましますと入ると、もうひとつ足音が聞こえた。

「ご足労おかけした。政宗様がどうしてもと…」
「幸村の奴が淋しそうだったんだ!」

政宗の頭を撫で、柔らかく微笑んだのは片倉小十郎。
カッターシャツにチノパンというラフな恰好が、その人のイメージを壊す。
初めて会った時は、ビシッと決めたスーツが印象的だった。
この丸きり逆のイデダチに、佐助は何故か自分の頬の熱さを覚えた。

なっなんでよ俺ぇ…

セルフツッコミも虚しく、両手を子供たちに引っ張られて、靴を脱いだ。
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