Black Block
□抱きしめたい
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「ぐっぐるじぃ…エリザベス…客人のっ前…」
「シエルが悪いのよっ!私よりも男性二人を取るなんてっ」
いつもは顔を合わせないこの三人が揃ったことで、シエルの体は完全に束縛されてしまった。
急に冷え込んで暖炉を焚いたのに、それが全く必要性を失う。
シエルは一人汗を滲ませている。
「ところでセバスチャン・ミカエリス。」
「はい」
「何故だろうか…」
クロードが眼鏡をかけ直しながら、シエル争奪戦を眺める。
「何がです?」
「貴殿の主は、抱き着き易いのか?」
「真顔で言われましても」
「例えるならまるで、そう…玩具だ」
流石は英国屈指の…とブツブツ言っている。
確かに、坊ちゃんと交遊のある方々はハグ以上のコミュニケーションを取りたがる方ばかり…
「玩具と言うより、獲物とでも例えた方が良いか?」
「でしたらどなたにもお渡しする訳にはいきませんね」
そろそろお助け致しましょう
と、ツカツカと歩み寄るセバスチャン。
どうする気なのかと、アグニもワクワクしながら見守っている。
「失礼致します」
「セバスチャン…早くなんとかし…のぅゎっ!」
渦中からシエルをヒョイッと抱き上げる。
そのまま自分の胸へ抱き寄せた。
「○×△□∞@*¥%…!」
セバスチャンの胸の中でシエルは声にならない声を出す。
勿論、叫び声はセバスチャンの服へ染み込んでいった。
バシバシと背中を叩かれているが、お構いなしに切り出す。
「坊ちゃんは、私の獲物です」
「は?」
「皆さんが抱き着かれていたので、つい。」
「…っな、せ!!馬鹿者!!」
やっとの思いでセバスチャンから顔を引っぺがしたシエルは、ハァハァと酸素を貪った。
ふふっと笑って、
「いいなぁ〜僕もやって欲しいなぁ〜」
と、アロイスはクロードの腕に擦り寄る。
「実は、私も…」
「えっクロード!?ちょっと待っ…」
「何故でしょうか」
「何が」
「何故、クロードさんに」
「私に?」
「私が」
「セバスチャン・ミカエリスが?」
「抱きしめられているのでしょうか?」
Fin.