Black Block
□抱きしめたい
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「失礼致します。坊ちゃん、お着きになりま」
「シエル!シエル〜お招きありがとうシエル!」
一瞬表情を強張らせたが、すぐにいつもの澄まし顔に戻る。
セバスチャンを押し退けて、バタバタバタと少年が駆け込んで来た。
飛び付くようにシエルへ抱き着く。
「やめろ、トランシー伯爵」
「なんでアロイスって呼んでくれないのさ」
ぷっと頬を膨らませたアロイスは、シエルの眉間に唇を寄せ、
「大嫌いなのはここ見れば分かるよぉ」
と笑った。
「あの様にじゃれ合っているのを見ると、何やら親心と言うものを感じませんか…」
「ない」
「吊れない方ですね、クロードさん」
「貴殿には子でもいたか」
「まさか」
ふふっと笑いながら、お茶の準備を進める。
「手伝おう」
「何か下心でも?」
「一々殺意を膨らませないでもらいたい」
カチャカチャと茶器の音が響く。
火花を散らしながらも、両家の腕利き執事は仕事を熟す。
すると控え目に扉が鳴った。
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