見参!

□子供の事情。壱
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その日、前田保育園に残ったのは幸村の他にもう一人いた。



「まさむねどのー!もう一度しょーぶでござる!」
「いいぜ〜?手加減しねぇからな!」
「のぞむところー!」


伊達政宗。

年長組だが、年中組の幸村とはよく遊んでいる。
とは言え、専ら、幸村が敵襲をかけて返り討ちにされるのが常だ。
いつも遊んでくれる政宗がいるせいか、幸村は嬉しそうだった。

「あいつら本当仲良いなぁ…」

窓辺に寄り掛かりながら、慶次は呟いた。
幸村が一人で残っていればいつも遊び相手は自分だったのに、と残念そうに溜息を吐く。

すると二人は、こそこそと内緒話を始めた。


「まさむねどの…」
「…そいつはいい!」

話が終わるとニコニコとしながら、ぼんやり眺めていた慶次に歩み寄ってきた。
政宗は、持っていたスポンジ製の刀を慶次に差し出す。
幸村に手を引かれ、慶次はよろけ立った。

「慶次先生もやろーぜ」
「それがしとまさむねどの対、けーじせんせでござるよ!」
「俺も交ぜてくれんのか!?」

ニッコリ笑って、顔を見合わす二人。
気合いを入れた慶次は、まつに怒られるまで本気で遊んだ。





「もーダメ〜疲れたぁ…先生こうさーん」
「まさむねどの!」
「Winners!やったな!」

三人でじゅうたんの上に寝転がる。
楽しくて楽しくて、時間もあっという間に過ぎていた。

ふと、園内に車の音が響いた。



「あれ?この音は…」

「小十郎だ!」
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