見参!

□二人の事情。14200リク
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夢であるように




















この街の日曜の夜は、独特な雰囲気をもつ。

「チッ…」

舌打ちはすぐに雑踏の中に消えた。
視界に五月蝿いのはカップルが過半数で、後はサラリーマンと若者と。

「小十郎さん!どもっす!」

特殊な職業人。


スーツを着流し、猫背の男は、小十郎に頭を垂れた。

「あれが双竜会の」
「っざーっす!」

後ろにいた若い衆が次々に頭を下げる。

「長曾我部も随分若い奴が増えたじゃねぇか」
「へぇ…親父の拾い癖もどうにかなって欲しいもので」

失礼しますと会釈をして過ぎていったのは、隣のムジナを張っている長曾我部元親の息子、信親だった。
こうして、仕事以外の街中で、同じ職業人に会うのが面倒でならなかった。



双竜会



その名を知らない者はいない。
いるとすれば、カタギの人間とモグリであろう。
この業界とサツでは有名すぎる程有名だ。
伊達政宗を筆頭に、右腕の片倉小十郎は竜の右眼と呼ばれている。
昔気質を貫く、ドンと言っても過言ではない。

特殊な業界、つまり一般的にヤクザと呼ばれる中での話だ。


「あ、片倉さん!お疲れ様っす!」
「…あぁ」

何故タバコを買いに出ただけなのに、こんなにも声をかけられるのだろうか。
こんなことなら、若い衆に頼めばよかった。
自らの顔の広さを少しだけ呪った。

避けるように裏道へ入る。
ひっそりと風俗を経営する店や、昔馴染みのホテルがネオンを掲げていた。



「ねぇ」



ふと声がした。
猫の鳴き声かとも思った。

「ねぇ、そこのお兄さん」

喋る猫もいねぇだろと、小十郎は振り向いた。


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