見参!
□真実の事情。六
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その真実は
あまりにも
「佐助どん」
「あ、島津の旦那〜。昨日はすいませんでした!」
声をかけてきた工場の社長に、勢いよく頭を下げた。
島津は心配と優しさ半々の微笑みを浮かべて、佐助の背中を優しくぽんと叩く。
「よかよか、アパートのこつば聞いとぉ。リストラの火の粉がそこへ飛ぶとはなぁ」
それから、と作業衣のポケットから茶封筒を差し出した。
宛名には“島津社長殿”と見覚えのある殴り書きが散っている。
裏返して佐助は驚愕した。
「今日付けで辞めよった…。人員削減のお達しもきとってな…わしも苦汁の選択をせんとすんだばい…」
“長曾我部元親”
その文字が急に滲んで、佐助はその封筒を握りしめた。
俯いたまま一度大きく瞬きをして瞼に涙をしまう。
ごめんねチカ、好きだったよ
過去として清算した気持ちを、胸の奥深くに沈めた。
「島津の旦那も大変だったね…俺様もっと頑張るからっ」
再び上げた顔にはいつもの笑顔が張り付いていた。
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