副管理人小説

□第一話
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まだ、霧のたちこめる早朝。
一人の少女が芝生の上を歩いていた。
歳はまだ十六、七といったところである。
手には大きなトランクケース持ち、肩から真っ黒なローブ、頭にも黒く大きなトンガリ帽子をかぶっている。その姿はまさに昔話に出てくる魔女のようだ。その少女がふと足を止めた。城門といってもいいような巨大な門の前に一人の老人が立っているのだ。
その老人もまた黒く大きなトンガリ帽子とローブを纏(まと)っている。
「おはよう Ms芙蓉。故郷に帰るとはいえ挨拶くらいしていったらどうかね?あやうく今年の最優秀生徒を見送りそこねるところだった」
文句のような言葉だが顔は笑っている。本人は冗談のつもりなのだろう。芙蓉と呼ばれた少女もそれに気付いたようで笑みをうかべている。
「すみませんアンブラー先生。先生も最近は論文やレポートで忙しいようだったので、お手をわずらわせることもないと思いまして」
「ふん。生徒の見送りも出来ないほど老け込んだ覚えもないがな」
どこか子どものような調子で老人は反論する。
アンブラー・マグダウェル。芙蓉 楓がこの学園生活で一番お世話になったといってもいい人である。
そのアンブラーの顔から笑みが消えた。顔には深いシワが刻まれているがそれが老人の威厳や威圧感といったものを相手に与える。
「故郷に帰る前に卒業試験を与えでもってよろしいかな?」
その声からも威厳が伝わってくる。
「はい」
楓も真剣な答える
「ためらいなしか。それではゆくぞ」
 

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