peace for a while

□10:風邪っぴきと看病
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――カチャッ…パタン
「和暉?」

「あ……半兵衛は今、検査中でまだ時間掛かるみたいだから院内喫茶で時間潰そうか」
「Ah…、OK」
「…………」


 診察室から出た俺は待合室で待機しててくれた
政宗と小太郎の元に歩み寄った
どこか心配そうにしてくれていたみたいで少し微笑ましい

 取り敢えずは、後十分位は掛かると言っていたので
時間潰しに院内喫茶に立ち寄る事にした。






* * *

「……こう言っちゃあ悪いが、和暉はとんだgood naturednessだな」

「…?………」
「お人好しってか……まあ、そう言われても仕方ないけど」

「Ha お前が何の罪滅ぼしの為にやってるかは解せないがな」

「!……そう見えるか?」

「…多少な」


 そう言われては参ったな…としか言いようがない
政宗は人をよく見ていてくれる、だから
その分、俺が何を考えているのかも
予想は出来ようか…否…人の感情に敏感なんだな。


「……みんな…大切な家族として
好きで居られるから…さ……答えに…ならない?」
「Hu……相変わらずだな」
「…………」


 正直に話せば、これしか出ない、彼らだけは
家族として…大切に不自由はさせないと決めてる


 俺達の繋がりは彼らしか無い
政宗も小太郎も半兵衛も…家に居るみんなも居てくれて
心が温かいから…手放しなく…ないんだ


「政宗は嫌か?」

「Um…?」

「血の繋がりも無い者を、家族とか言うのは…」


 院内喫茶で頼んだアイスコーヒーの氷が
カランッ、と静かに静寂を割るよう鳴った

 それにタイミング良く、政宗と視線が噛み合う
…その隻眼は少しの戸惑いと、憂い…それでいて真っ直ぐな鋭い目


「Ha……嫌だったら、俺は今こうしてオメェらと居ねぇさ…」
「……、………」

「そっか……なら良かった…」


 まるで爪を尖れたように丸いと思ったのは
悪い意味ではなく良い意味だ、政宗も小太郎もまた同じ
…家族として思ってくれていたのだと安堵した

 擦れ違いが無くて良かった、それを聞けて嬉しかった。


「俺も小十郎も……最近来た奴はどうかは知らねえが
…此処で過ごしているとどうしようもなく peace of mind(安心)」
「!!…」

「向こうに居た頃には無かったものだ…感じた事もねぇよ…」

「政宗…」


 認めたくないが認めざる得ない、政宗の言葉が
そう言ってる気がした…とても今を感じてくれてるのだと


―ガタッ…
「……さて、そろそろあの仮面の腰巾着ん所
戻るとするか…もう終わった頃だろ?」

「うん、そうだな。……小太郎?」
「…、………」


 政宗とは初めてゆっくりと話せた気がした
お陰で少し前向きな気持ちで居れそうだと思った所
小太郎が動かずポツリと此方を見据えた

 何か言いたそうな、でもそれは数秒間の事で直ぐに切れる。


「…、………」

「なんだ、アンタ……伝説の忍っても、ちゃんと持ってるんじゃねえか…」

「…、……」
「そりぁそうだよ、伝説の忍でも
小太郎は人なんだから…何より俺達の家族なんだからさ」

「!…、………」


 小太郎も家族だと、そう告げた時…彼は微かに肩を揺らした

 それが嬉しかったか、嫌だったかは分からない
だけど言った事には不思議と後悔はなかったから


「…ほら、さっさと行くよ」


 自ら先だって、もう半兵衛の診察は
終わっているだろう…待合いへと戻った。





* * *

「……半兵衛?」

「!!…和暉君…っ!」
「うお…大丈夫?なんか随分とげっそりしたな
…初めての診察にびっくりした?」

「……嗚呼、とてもびっくりしたね…」


 待合いで俯きながら座っていた半兵衛を見つけ
呼んでみれば彼は俺達だと確認し、目の色を変えて
駆け寄ってきたのだがフラりと…転けそうになる
その手前に俺の両肩をガッシリと持ち、立て直す。


「Haッ 彼の豊臣軍師様らしからぬ発言だな?」

「……、返す気力もない……。あんなカラクリは
君自身が経験しないと到底分からない物だ…」
「Ah?…………」


 思い返したように頭を抱える半兵衛は
挑発的な言動を向けてきた政宗には仕方無しと溜め息のみを吐いた


「――…へぇ…中々どうしてか…珍しい物を見た気分だね…」

「Hm…」


 そんな様子には政宗の癪に障るようなものだったが
…珍しく彼も反発の様子は見せなかった

―スタスタスタスタ……

 いや、それさえも削がれてしまったんだろう…
先程から此方を往復して来る
白衣の天使ことナースの人達の通りが激しい


―キャアキャア…

「「……はぁ…」」
「…、…………」
「ぶはっ……ぐく…っ」


 明らかな芸能人顔負けの美男子が二名とミステリアスな美形
そして、彼らの保護者もとい隠れて笑ってるけど
中待合いでスラリと足を組んで待っているのだから

 見なければ損だとナース達は急速に噂を広げて見に来ていた


「……和暉君、帰ったらお仕置きでもしてあげようか?
僕が直々にその奔放な性格を教育し直してあげるよ…?」
「HAッ!アンタにしては面白いproposeだ、それに乗るのも悪かねぇかもな?」

「あっははは〜……」


 何故に、S心発動させちまったかも
やばいやばい、コタは…あれ…この子
俺の背に隠れてるよ、庇ってくれないんだチクショー。


浅霧さん、一診へお入り下さい

「「チッ…」」
「…グッタイミンーグ…」
「………(ホッ…」


 正しく天の助けに思わず、俺と小太郎は二人でホッと一息
しかしS共は舌打ち…変な所で息が合うだから困るな。
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