薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜

□拾五
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「ああっ、いちいちうるせえんだよ、てめえは!。重傷人が居るんだ!ちっとは黙っていやがれ!」

「なっ!?なんて口の利き方を……。土方君、あなたは…!!」
「まあまあ、伊東さん」


と、近藤さんが割って入った


「トシも、悪気があるわけじゃないんだ。大切な仲間が傷付いた…状況が状況だ、勘弁してもらえないかな」

「それは分かりますが…。あぁ、なんて野蛮な人達っ
この伊東、こんな方々と一緒になんていられませんわ!。山南さん、あなたの口からちゃんと事情を説明してもらいますからねっ」

「……くっ」

「聞いてるんですか、山南さん?」

「……うぐぅ……っぐぁぁああ!」
「山南さん?」


ふと、山南さんは苦痛に顔を歪め始めた、彼の隣に居た
千鶴ちゃんの呼び掛けの言葉も
どうやら耳に入ってない


「どうした、山南さん?」

「山南さん、あの……」
「ごほッ!!っ…駄目…だッ」
「馬鹿、縁!?
くそッ、下がれ!千鶴!」

「えっ!?」


悲鳴を上げた躯、俺が飛び出すのが早いか山南さんが早いか
彼の髪の色がみるみる
白く変わっていく


―…トスッ…
「…!……っ…」
「……よかっ…た…」

――……嗚呼…間に合えた

助けれた
彼女の変わりになれた…


―グイッ……ガッッ!!
「ぅ"ァ…っ…」


その直後、羅刹に変わり果てた
山南さんに凄まじい力で腕を掴まれ、畳の上に俯せで叩き付けられた…その衝撃、打撃…傷が開く


「血……血です…」
「さん…なん…さん……っ」


山南さんは俺の背に跨がり
背中の傷口の血を掬い取った


「縁君の…。血を下さい…君の血を私に…」

「…っ…はっ……どう…ぞ…貴方がっ、充たされるなら……ごほっ…ごほッげほっ!?…はっ…はぁっ…」

「?!…い…いやっ…縁さんっ、止めてください…山南さんっ」

「馬鹿、何考えてんだ縁っ!やめろ、山南さんっ!」

「くそっ、山南さんまで血の匂いにあてられやがったか!」

「山南さん!縁君を離せよ!」


この時、皆は悲痛に満ち
戸惑っていた…

実力で制止すべきかどうか

――…皆の迷いを
断ち切ったのは歳さんだった


「大馬鹿が…いくらなんでも
縁の身体が保たねえっ、取り押さえろ!多少、手荒になってもかまわねえ」

「ちっ…仕方ねぇ」

「悪く思わないでくれよ山南さん、流石に縁には辛い状況なんだ」

「縁君を殺らせるわけにはいかないんだよ」


皆が次々に刀を構え直すそんな光景に俺は必要ないと首を振った

だが、皆は受け入れない、その瞳には仲間に刃を向ける
覚悟が備わってる…


「君達、まさか山南さんを……!?勝手なことは、この伊東が許しませんわ!縁君を助け出す策ならば、今すぐこの私が!」

「伊東さん、此処は危険だ。
後はトシ達に任せて俺たちは
部屋から出ていよう」
「あっ、近藤さん!?何を……わっ、わっ、離しなさいよっ!」

「吾妻君、霧賀埼君
君達は雪村君を救護室に」


近藤さんは暴れる伊東参謀の
身体を抱きかかえるよう部屋から無理やり連れ出し


「…っ……承知…」
「…雪村君…失礼…」

「っ…吾妻さん…霧賀埼さん…
縁さん…は…っ」

「……大丈夫です…長なら…」
「……長が…我が身より君を護ろうとした
だから俺達も君を助けよう」


ついで、幹部達と戦闘態勢を取っていた悠乍と琥朗に
俺の告げられなかった言葉を代わりに伝えてくれて
二人は千鶴ちゃんを
救護室に非難させてくれた



「ありがてぇ。後はこっちの
始末をつけるだけか」

「だが、それがなかなか……」

「山南さんの腕は半端じゃないし、まして今は……」


「くくっ……そうです、血が欲しい。私の身体が血を欲しているのです」
―ググッ……ズチャ…
「く…ぅ"ア"ァ"ッ……」


山南さんの手に力が籠もり
掴まれてる腕が軋む


「血を………血…が…」
「!……さ…ん……な…ッ!!」


背中の傷口が弄られ更に広がり
それを口に含むを
繰り返している…。


「っ、もう許せねぇよ!いくぜ、新八っつぁん!左之さん!」
「おう、一度にかかるぜ!」


「……いや、待て!」

「何だってんだ土方さん!?」

「山南さんの様子がおかしい」


だが、その行為がふと止み


「……んぐうああああ……ああああ!!」


腕を掴む力が弱まった頭を抱えながらも…口に含んだ血が彼の身をやっと巡り渡ったのだろうか


「お、おい……山南さん……
どうしたんだ?」

「……ん……んんん……
わ、私は、一体?」


山南さんの瞳に理性の色
髪の色も元に戻っていった…。


「…はっ……はは………自我を…とり…もどし…ました…か」

「?!……縁…君っ…何と言う有り様で…。…わ、私は一体、何を……?」


苦難の決断のギリギリだった
危うく、俺の真上で血が舞うところだっただろう

運が良かった…常人の血より
人でない作られた血の方が
乱れた精神を正すようだった
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