薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜

□拾参
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「そちらの方は斎藤さんよね?新選組は有名だもの。知ってるわ。
―――…貴方は、救護隊の隊長…雪浪 縁さん…間違いないわよね?」

「?……ええ」


 一の時は確信した口調だったが、俺の時は
何故か確かめるかのような様子だった、何だ…やはり
彼女に見据えられると渇くのは…やはりこの娘も

―――いや…早合点かもしれない。


「そう……。で、貴女の名前は?」

「私は、雪村 千鶴です。よろしくお願いします」

「よろしくね、千鶴ちゃん。私の事は"千"って呼んで」
「お千さん……?」

「なんか、水臭いなぁ。見たところ
同い年くらいだし、そんなに畏まらなくていいわよ」

「そ、それじゃあ……、お千ちゃん……?」

「まあ、許容範囲かな……うん、そう呼んでくれるとうれしいな。
じゃあ、また会いましょうね千鶴ちゃん
……縁さんもご縁があればまた、どこかで」


 にっこりと、笑顔の侭、明るく言うと千という娘は
着物の裾が翻るのも気にせず走って行ってしまった

 何とも明るい、持ち前のものだろう
奔放な空気に恐らく一意外は飲まれていただろう。


「あの……」


 ふと、千鶴ちゃんはちらりと俺達を見上げた…。


「……私の男装って、そんなに分かりやすいですか?」


 少し残念そうに尋ねる千鶴ちゃんは男装に自信があったのだろうか
それともバレてショックだったのだろうか

一は千鶴ちゃんに視線を向け、合間を挟んでは
彼女の頭をまた撫でていたのに俺にも視線を寄越し
比べるよう頭の天辺から足の爪先まで眺めていた


「…可愛い女の子にしか俺は見えないんですがねぇ…」
「…"知り合い"と比べれば…分かりやすいやも知れん…」

「…知り合い?」

「……さてな………」
「へぇー……」


「ぇ?!…あのっ…二人して重ねて言わないで下さいよっ!
その、どういう意味なんですか、それは……!?」


 一は面白そうに微笑を浮かべた
……明らかに知り合いとは俺と言いた気だな。


「そろそろ、場所を変えるぞ。
これじゃ、何時まで経っても見廻りきれない」

「そうですね…承知に」
「………は…はい!」


 そう言うなり歩き始めてしまう一に俺は
面白くないので後ろから彼の耳許にそっと顔を近付け


(……帰ったら……俺とイイことでもしましょうか…覚えてなさい…)
(…?!…)


 何時の間にか落ち着いた渇き、一をからかう余裕も
戻っている事に安心しつつ俺は一達と見廻りの歩みを進めた。




 不思議な娘に出会ってしまったな……

 また会いそうで、内心、どこか恐かった。








to be continue…




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