〜尊いし眸〜

□十六章
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「聖だから……皆で探しに来たのですよ…貴方は私達の大切な家族なのですから……」

「…綱元ずるいじゃん、横取りするなんてさぁ〜」
「おや、恨み言は受けませんよ?貴方が長く聖と触れ合っているからでしょうに?…私だって心配で心配で仕方なかったのですよ」

「…むぅ…」


綱元さんの腕の中だが彼の肩から乗り出す成実さんには自然と笑いが零れた…勿体無い……こんな


「……僕には勿体無い…です…お二人には…ご迷惑をお掛けしているのに…」

「そんな覚えはありませんよ……聖…もう少し、私達に甘えるというものを覚えては?」
「ああ!それは同感!」


笑顔が眩しいや
ご好意は嬉しいけど…でも、流石に遠慮は出ます…


「と、言う訳で政宗様がお戻りになるまで此処でお花見でもしますか。丁度、小田原の女人から桜餅を頂きました」


綱元さんにひと撫でしていただいた後、彼は何処からともなく割った竹筒に笹の葉で蓋をした物を

中身は彩り鮮やかお餅達…
…何処に隠してたんですか?


「……?」
「綱元ってば相変わらず準備が良いねぇ〜、中の餡は何々?」

「白餡と漉餡と粒餡でした」
「げっ…なんで白餡まで入ってんのさー?!俺が嫌いなの知ってて持ってきてない!?」

「ふふ…偶然ですよ……さ…そこの忍…警護のつもりならばもっと近くで…どうですか?」
「!!」
―ビュンッ……ガサッ!!


あ…綱元さん、此処とは
桜木二本分離れた
木々と小田原城の屋根上に
短刀を投げた…


―シュ…タ
「うっは〜……全く…伊達の人間は血気盛んだわ、俺様危うく穴が開くところだった〜」

「……、………」


綱元さんが投げた先程の短刀を
銜えた佐助さんと
無言の侭の小太郎が降りてきた


「申し訳ありません、我慢出来ず投げてしまいました」

「片倉の旦那と似た殺気飛ばしてくれんね鬼庭の旦那、あ〜怖い怖い」

「…武田の忍さ、綱元も確かに怖いんだけど、一番怖いのは畑に居る時の小十郎なんだぜ?」
『………………』


桜餅食べてる成実さん…それはボケですか…皆さん呆れたように驚いてる……でも二人が


「佐助さん、小太郎…一緒にお花見……してくれませんか?」


僕の申し出に、佐助さんが
特に驚いていた…
困ったような戸惑ったような…

「……聖ちゃん、嬉しいけど…あまり俺様なんかとは…」

―バシッ
「あだっ!ちょっ、いきなり何すんのさ風魔?!」
「…小太郎?」

「……、………」


困り戸惑った先、佐助さんは僕に断りを入れようとしたんだと思う…けど小太郎は、そんな佐助さんをいきなり叩いた

本人は勿論のこと
当然、僕達も驚く…


「……、…」
「……あ〜…はいはい、なるほどね…。…そりゃ俺様だって聖ちゃんの気持ちを落とすような真似はしたくないさ…絶対…」
「…?……」


佐助さんの様子がおかしかった
一度は真剣な顔つき…
だけど其処には悔いるような
…自身を嘲笑うかのような
悲しい笑みだった…

けど…彼はそれを隠す…


「聖ちゃん…どうしたの?ぼ〜っと、俺様を見つめちゃってさ?」
「!…、……」

「?……」


やはり…佐助さんはそうやって
嘘を貫き通し
…誤魔化すのだろう…


「佐助さん……こっち来て」

「え?…聖ちゃん…?」
「…………」


彼の手を取って
此処より少し奥へと歩んだ

…途中佐助さんは戸惑っていたけど僕は構わず彼を離さず
少し桜が深い木の根元に歩んだ


「……一体どうしたの?」

「……佐助さんと…一緒に
手を取って歩きたかった」

「……。……大丈夫…
君は一人でも飛べる」

「…………」


「それに…独眼竜もいる」


どうしたんだろう…

何故、彼はそんなにも政宗様と
距離を置くのだろう…

佐助さんが政宗様を苦手なのは知っている…

でも、この避け方は
苦手というもので
成り立つ行動じゃない…なら


「…佐助さん……何か
あったんですか…?」

「どうして?……何もないよ」


……嗚呼、これは嘘だ…
否定を事実にさせようとする
佐助さんの優しい表情があった

あの夜、きっと
僕と会ったその時から
何かあったんだろう…


「……佐助さんは…
僕が嫌いですか…?」
「…そんな筈…」

「…昨日の僕は……
酷い有り様でしたか…?」
「っ!?…」


佐助さんが気にするような
当てずっぽうな心当たり……

だけど…まさか…

図星を指してしまったようで
握っていた手に力が籠もった…


「…佐助さん」

「分かってる…
分かってんだけどね……。
感情出してしまうなんて
俺様、忍失格だね……」


今度こそ、佐助さんは
純粋に悲笑を浮かべている…

僕の手を握ってくれる
彼の手も……震えていた
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