薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜

□拾一
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―――…カシャャャ
「源伎、遅れてすみません…戻りましたがお変わり…は…」
「「「…ぁ……」」」

「「「お…長……」」」


 千鶴ちゃんの兄、南雲薫との出会いにより
通常の巡察終了帰宅より遅れて救護室に戻った…が
目に飛び込んできたのはカオス、とでも言っておきましょう。


「……。此処は救護室なんですが…ねえ?……なんです…?
この散らかりようは…?しかも何で組長である
平助に左之さんに新八までいるんです?仕事はどうした?」

「え…縁君…お…おお帰り〜…ず、随分遅かったじゃん…」
「お、お帰り!縁!」
「これは何つーか…そのだな」


 駄目だな、完璧に挙動不審だこうなりゃ教え子に聞くのが
無難だろう…この子らは嘘をついたりしませんからね

 あ、けして親バカならぬ教え子バカではありませんよ。


「源伎、説明を…」
「申し訳有りません長あぁッ!私と言う者が
此処にありながらこんなっ…こんな状況下にぃぃっ…ぅぅ…!!」

 
 頭を何度もペコペコ下げる源伎、…あれ、どうした
あの副隊長として何時も俺に頑張りを見せてくれた輝かしい子は

 駄目だ、可哀想だから頭を撫でるしかないや。


「(源伎はこんな性格でしたかね、嗚呼
…この子は駄目だ…完璧に自分の所為にしてしまってる)

……源伎、大丈夫です…貴方の責務じゃありませんよ…
それに俺の留守を預かってくれたんですから
とても感謝してます。だから、少し落ち着きましょうね」

「長あぁぁあ…ッ!!!」

「はいはい。……じゃあ、吾妻に…」
「…す……す…すす…みま…せん…お、長…自分では、とと…止める
事適わなく…おお、長に任されたこの場を護ることも…」


 吾妻…君も駄目なのか…何でそんなに怯えるの
俺が苛めてるみたいで逆に申し訳ないんだよ
…取り敢えずこの子も駄目だ。落ち着け、頭撫でてあげるから。


「吾妻、落ち着きなさい、別に貴方を責めたりしません
十分に貴方の頑張りは分かりますよ?止めようとして
手を何処かにぶつけたんですか?後で手当てしましょうね?」

「ぅ…っ…ぅうっ…はぃぃッ!!」

「―――…頼みの綱は谷沢…貴方のみ、さあ俺に説明をなさい」
「ぁ…あはは……なんか、ほんと、すみません…」


 良かった、何とか谷沢は説明は出来そうな子だ…。


「……実は、俺と藤堂組長と永倉組長で…原田組長の指揮の元…
新薬の開発に挑戦したら大失敗しちまって…
長が保管してた予備薬の二割……爆発させちまいました」

―――バギッ…
「「「……(ビグッッ」」」


 説明してくれてありがとう谷沢

そしてサヨウナラ、三馬鹿…思わず力余って
折れた障子の木組みは後で直して下さいな
君達は俺が作った新薬の実験体にもしてあげるか。


「…ははっ、はぁ。……………、…別働隊陣形に入れ
…尚光、弦之助、悠乍、そこの三馬鹿を即捕縛」
「「「!!、承知!」」」

「げっ…ま…マジ?こんな時に別働隊を動かすの?!
勘弁だって悠乍!ちょっ、離して!なんか、ヤバい事される!!」
「すみません…長の命は絶対ですから」

「は、離せ、弦之助!テメェ裏切んのか!」

「…すいやせん組長っ!でも俺、実験を受けるなら
大人しく正座して長の説教を延々と受けますぜ!」
「意味分かんねえよッ!!」

「ひ…尚光…離してくれ…な?」
「申し訳ありません…長の命令だけは絶対です」


 別働隊は余り動かさないがこの際だ、日頃の成果と偶の鍛錬
実力の結果を出すついでをこの三人に勤めさせたら上手くいった。
コンビネーション連携捕縛の手も完璧だった

 君達なら何時でもいけるな、主にこの新選組には。


「弦之助もちゃんと説教を受けることを分かってるなら宜しい。
では、これより三人にはこれを試してみますか…
投薬をお願いしますよ…嗚呼、危なくなったら
解毒剤で簡単に消えるようにしてますから
それまでの症状記録をしっかりと記すように」

「「「了解!」」」
「「「了解じゃねえぇぇえ!!」」」


 救護室にて大の組長格三人分の叫びが
屯所内に響き渡り――――…そして消えた。


 この事情を知るのは終始を見ていた監察方の山崎烝のみ。


「……縁さん、これ…成功薬…なんでしょうか…?」

「いえ違います、ただの脅し薬ですね……でも、あんまり
実験薬を投与してると人間の身体は薬に対しても
慣れと言う名の抗体性を持ちますからアレですね
…逆に裏方の薬でも回してみましょうかねえ…」

「え、縁さん……自分も同じ医を学んでる身として…まだ…
今の侭の状態が宜しいかと……う、裏方は少し酷ですから…ね…。
そ、それよりも局長と副長がお呼びですので、このくらいで…」

「……分かりました、直ぐに行きます。
知らせて下さりありがとうございますね」


 理由は簡単、局長と副長の呼び出しにて訪れてしまい
丁度カオスを目撃したが故、そして唯一の救済者だったと
感じたのは三人の組長と救護隊の隊員だったとか……。




―――…取り敢えず、急ぎ広間に集合しに行こう…。
教え子達や左之さん達のお陰で嫌な事が知らず忘れられたから。





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