〜尊いし眸〜
□十泗章
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「はっ!承知しております
政宗様…貴方様のその胸に秘めたるお怒りはこの小十郎の内にも…貴方も、聖も…必ずや」
「good reply<良い返事だ>」
この小十郎…貴方様の背は必ずや護りきる…勿論、聖…お前もだ…政宗様がこれ程まで大切になさる…【双竜が宝】
―キュルルルル…
「Thank you…little bird」
…蒼空に似た小さな鳥が離れる時の政宗様のお顔はどこか悲しそうだった…
(……必ず……必ずや…)
聖…やはりお前は、双竜から離れちゃあいけねぇ存在なんだ…
俺達はお前が必要だ
* * *
―シュ…タッ…
「…く……ぅ…」
「…!…………」
―スト…
風魔が降り立った頃には景色は桜が溢れ咲く城内園らしき場所へと居た…だが痺れが強い所為か流石は伝説の忍が仕込む毒なの
僕の身体は段々と呼吸するのが辛く…呼吸器官が動かない
「…は……っ…ぅ…ん?!」
が、そんな最中に僕の態勢は風魔の膝に乗せられる形に変えられて…ふと顔が近付いては接吻が交わされたのだと…薄ら理解した
―…コク…ッ
「……、…………(ナデナデ」
「!……っ…に…にが…ぃ」
突然の事に抵抗も出来ず彼の強い押さえにも適わず喉に
流れた液体か…吐き出す事なく
飲み込んだが…苦い…
だけど風魔は構わず僕がそれを素直に飲んだ事に対してなのか…何度も頭を撫でてくれて
彼の目は見えないが
その姿、行動は見離せなかった
(……薬……毒は…消える)
「?……?………ぁ……薬……ありが、とう…」
「……………(フルフル」
風が過ぎ去る音のように口ぱく…なんとか読み取った
それが意外過ぎて呆けてしまったが…この人…僕を殺すつもりでは無かったのか
「風魔が戻ったとな!何処ぢゃ〜!風魔〜!風魔ぁあああ!」
「………………」
「…!……」
そう考えていたら突然城内から
ご老人らしき声が聞こえて
それは此方に近付いていた
「おぉ、そこに居ったのか
相変わらず門から入らずの
お空から飛んできたんぢゃのぅ
…って、ぎょわぁぁああ!?
何故【小鳥の君】が怪我をしておるんぢゃい!!まさか風魔!伊達の小僧に断りも言わずに無理矢理連れて来てきたんぢゃ…」
「……、………」
「…北条のお爺さん…まさに…
その通り…なんですが…」
此方に顔を出したのは北条家が主、北条氏政…僕達の目の前に現れては慌ただしく、無言の風魔の変わりに僕が苦笑気味に説明すれば、氏政お爺さんは腰を抜かしてしまった…
「あばわわわわっ…な、なんと申し訳ない事を…っ…すると…もしやその傷も風魔がやってしまったもの…」
「………(コク」
「いえ…あの……別に」
「あばばばばっ…ごほっごほっ」
「…僕は大丈夫なんですが…」
大丈夫だと言いたかったんですが北条のお爺さんは
さらにぎっくり腰のように
崩れ落ちてしまった
「…そ…そういう問題ではないんぢゃ小鳥の君よ……今や各国に流れておる噂は想像以上ぢゃぞ……多くの武将から狙われておる、お主を過剰に大切にしておるらしい双竜…」
「え……?」
「…いや…本人が分からぬのも当然ぢゃな……あの破天荒な奥州の独眼竜が今や天下の情勢は二の次、己の大切な物を護る事しかせんようになっておれば皆、その竜の宝が気になるのぢゃろうな、実は儂も北条の為…ご加護があればとお主に会いたかったのぢゃが……否の返答ばかりでの……う〜むむ…」
「……そう、でしたか」
やはり、僕の存在は各国の武将にとっては異端なのか…端又は危ぶまれている存在なのか
蒼空を利用したいだけなのか…
何れにしても全て当てはまる…
「……、………(スイ」
「?!」
「風魔!何処にいくんぢゃ!このままでは確実に伊達軍は
北条を攻めてくるぞ!」
「……………(プイ」
「あ…あの……風、魔さん?」
「……、………(フルフル」
「ぇ?………ぁ……な…まえ?」
「…………(コク」
北条のお爺さんと話していた間にも関わらず風魔は何の前置きも無く僕を抱えあげたが、北条のお爺さんも僕も彼の行動には驚いた
「……小太、郎…?」
「…………(コクコク」
―シュッッ…
「ふ、風魔ぁぁあ!何処に行くんぢゃお主は!これ以上小鳥の君を傷付けたりしてはいかぁぁああんっ!風魔あぁぁああッ!!」
彼の考えも全くだった…突然
なんとなくだったが
名で呼んでほしいのは当たっていたらしい、そして北条のお爺さんの制止も聞かずにまた飛び立ってしまった……一応主なのに大丈夫かな…
そして程なくして風の勢いが止まった…小太郎が止まっ…た
「!…こ……ここ、小太郎…っ
こ、此処は…え、え…栄光門の…う…上…では?」
「…?………(コク」