〜尊いし眸〜

□十参章
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「…北は寒い国ですけど……緑が実る綺麗な土地…」
―――…パタパタ……チチチチ


「rareだな……お前に似て…綺麗なbirdが寄ってきた…」

「いえ…そんな事はありません……翡翠<カワセミ>……清らかな水脈が
この大地に巡ってるから…この近くにも在る…本当に…とても綺麗な所」

「嬉しいねぇ…聖にそう言ってくれると守り甲斐が更に上がるってもんだ」
――ザッ…


 政宗様は先に馬から降りると後から僕を降ろしてくれた
僕自身の肩に乗る翡翠は止まり場所が気に入ったらしく
暫くは肩に乗ったままだったが、そんな様子を


 政宗様や小十郎さんは笑って見ていてくれた。


「お前は土地に関しても詳しいんだな?確かにこの奥州では
水脈が通っているが…綺麗と言われる程に俺は判断出来ない」

「…いえ、でも小十郎さんが作ってくれる野菜は美味しいです…
政宗様や小十郎さんがこの大地を他国の武将に荒らされないよう
国や民…仲間……命を懸けて大切に護ってるから
此処の国は綺麗なんだと……僕はそう思えてきます…」

「!?……聖…」

「HAHA! ったくよ……お前って奴はどこまで
この竜をlittle birdの虜にさせてくれんだか…」
「?」


 そう言うが政宗様はどこか悲し気に微笑んでいた…
それを見た小十郎さんもどこか浮かばれない表情…。


――チュン…チュンチュン…
「!……命を懸けて…双竜が護った場所……朱に…染まった場所…」


 翡翠はこの土地に居て長いらしく教えてくれた…
天下を狙う武将は多く…此処も何度か攻め入られ戦を起こした場所。


――…チュン…チュン
「うん……だけど…風の匂いは、もう綺麗で…穏やかだよね……」


 だけど、動物達は穏やかに暮らせてると言っている…竜が護る土地
…未来で大地を穢す人間と、この時代の人間は大きく違う。


「小鳥の君、尊いし鳥…双龍の小鳥…巨大鳥の申し子
人世に御託宣、又は裁きを下す神鳥……各国で
思わぬ勘違いを招く程に称されてるみたいだが
…お前の眸に移る、景色のそれは
やはり…本物なのか…本物と思って良いのか…」


 小十郎さんが呟きを零し政宗様の視線は
下へと向いて僕も追った…摺上原から見える各々の村落

 ある一部では立て直してる村も見える……。


 奥州は政宗様の国だ…だけど…

そうなると…政宗様や小十郎さんは…多くのモノを
失い、見てきたんだ……数え切れない程、たくさん。


「小十郎さん……僕の眸に映る景色は、政宗様や小十郎さん
…伊達軍の皆さんが大切に護ってきた国と民
そしてこの土地に生きる動物達が豊かに
笑顔で……みんな…此処が好きだって言ってる…」


 失って……失って…護りたくても、護れなかったモノ


 護ってきたモノ…築き上げてきたモノ…豊かに沢山…。


「…聖はどうなんだ…?この独眼竜が統べる奥州を…」

「大好きです…。僕は竜がこの奥州を…"政宗様が居てこその奥州……そして、その背を見守る小十郎さん"…双竜……二人が居るからこの奥州は成り立つ…二人が居なきゃ…居ないと…僕は嫌です……」
「「!?…」」


 眩しいくらいに、この土地に生きる
人々達は輝いて…生きる強さを持っている…。

「…僕も…見習わないと…」

 村落を見下ろしながら浅く覆い茂る叢に膝を降ろし
手を付いて大地の感触を味わった…強く根付き…温かい。


――チュンチュン……パタパタ
「…ありがとう……また来るよ……」


 翡翠は空を舞った例えこの地が朱に染まったんだとしても

 みんな、この奥州の為に戦い…綺麗に散ったんだ…


 だからこの地は穏やかなんだ…戦った人は皆…悔い無く。


「……………、小十郎」
「…どういたしましたか」

「…俺は…誇りに思いたい…」

「?!……政宗様…」

「改めて教えられた気がする…聖の言葉が…助けてやれなかった奴らを救ってくれた気がした……竜をも救ってくれた…何で、今更になって気づかされちまったのかねぇ…」

「………、…フッ……尚更…手離せなくなりましたか?」

「No 小十郎…逃がさない…だ…little birdは、この
独眼竜と竜の右目が飼ってんだぜ?最後まで責任を持たねぇとな?」


 二人は小声で喋っていたので僕の耳に二人の会話
聞き取る事は叶わなかった…だけど、政宗様は
突然、背後から僕を抱き締めてきて驚きを隠せなかった


「ま…政宗様…?」
「I won't take no…<嫌とは言わせない>
一生…俺達の元から離れるな……逃がしたりもしねぇ…OK?」

「…あ、の……」

――ワシャワシャ…
「そう言う事だ、逃げても、飛んで行っても
各国を駆け回ってオメェを政宗様と共に捕まえてやる」


 だけど、僕の様子はお構い無しに
小十郎さんまで僕の頭を撫でてきた…。





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