〜尊いし眸〜

□十参章
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 政宗様の目つきが鋭くなった……しかし
かすがさんは動じずに息を付き、身を正す


「勘違いするな独眼竜、私をコイツと同じにするんじゃない
……ただ…小鳥の君が、どんな人物だったか確かめに来ただけの事
謙信様までが気に懸けるなんて……私が見過ごせる筈もない!」
『……………』

(謙信様々だ…)


 何だか政宗様が聞くだけ無駄だった…的な感じで
溜め息を付いていた…そりゃそうですよね
謙信様一筋のくノ一事、かすがさん…つまり視察みたいな?


「……、越後の上杉謙信…軍神とも謳われる方…
かすがさんみたいな…心から信頼出来るくノーが居るなら
謙信さんも安心なんでしょうね……何時か挨拶に行きたいです」

「?!…とっ…とと当然だっ!わ、私はあの方のつっ…つるぎ
あの方を御護りすることが私の…しっ…使命だからなッ!
…………こっ…小鳥の君が謙信様に会いたいと言うなら…わ、わ
私、から…っ…謙信様に…そう…お伝えしてやっても…構わない……ぞ」

「!……かすがさんやっぱり…優しいお姉さんみたい
嬉しいです、ありがとう……かすがさん…!」
「っ〜〜…!?……わっ…わっ…私は越後に戻る!
失礼したな…っ独眼竜とその右目……こ、小鳥の君…
お前には…また私から直接連絡に来るから待っていろ!」
――ダッ……バサッ、バサッ…


「?………行っちゃった」
『……はぁ〜…』


 かすがさんの慌てた様子は理解出来ない侭
彼女は何処からともなく現れた白い梟と
共に米沢城を飛び出て行ってしまった…。
  
「……軍神…様…」

 しかし、何時か謙信さんともコンタクトを取れるかも、と
内心でほんわかしてたらまた政宗様達に溜め息を吐かれてしまった


「……聖ちゃん、凄いね〜…あのシャイで軍神一筋なかすがを
丸め込むなんて…並大抵の人間じゃ出来ないよ〜…うん」

「おい、猿……聖はまだ奥州から"飛ばせて"良い時期じゃねぇのは分かってんだろうが」

「そ…そんなもん俺様だって承知だっての……でも、これは聖ちゃんの
意思なんだから…本人の権限も少しは尊重してやりなよ」

「猿飛…確かに軍神は安全でも……他の武将共が黙って見てると思うか?」

「…片倉の旦那…それを言うのは俺様じゃなくて、でしょ?
…ま、でも…その注意点も分かっていないようなら
聖ちゃんにはまた甲斐にでも来てもらうから…
この子の人を観る眸は確かなんだけど…それでも危なっかしい」

「Ha 猿…竜の眼、その行動も舐めてもらっちゃ困るぜ…?
俺だってコイツの為なら腹を括ってる……その為の同盟だ」

「……分かってるなら良いんだけどね………この調子なら
越後の軍神 上杉謙信との同盟を考えるのも悪くはないと思う」

「………考えておくさ…向こうもどうせ武田のオッサンと同じ腹だろ」


 政宗様の口から出た【同盟】と言う言葉…
本当に…この人は…"僕なんかの為"に
甲斐の寅、武田信玄様と【同盟】を組んでくれてたんだ。

 信じられない……けど"動物達"もまた嘘を付く筈が無い。


「政宗様……佐助さん…」

「おっと……この件を俺から聞こうなんざ…
野暮な事は考えるんじゃねぇぜ? You see?」

「……、………」
「……ん、え?え?俺?―――…俺様に説明を御望みで…?」

「……うん……駄目…?」


 おそるおそると、政宗様には控え目気味に尋ねてみたら
少し妖しい笑みを向けて来られたので諦めて
佐助さんに同盟までの経緯を聞いてみようと彼に視線を向けたのだが
   
『……………』

 何か変な事言ったかな…佐助さんを加え
…皆でして僕を見ながら目を見開いてる…。


「little bird……いや…聖…何時、何処で
そんなおねだりを覚えたんだい?自分で覚えたのか?」

「…お……おねだり…?」

「……っは!!?…危ない危ない…危うく
危険な扉が俺様の中で開きそうだったわ〜…危ねぇ…」
「……扉…?」

「はぁ…オチオチ、目も離してらんねえな…」

「………、??…」


 三人で納得しながら頷いていた…けど、僕は
理解出来ない侭政宗様は急に僕の頭に手を、ぽん、と
置いてくるから再び頬は安心に綻ぶ。


「……しかし、この何月かお前も色々あって
外出とか出来てねぇしな…外の世界も気になるか…」


 外の世界……とは言っても、限定されるだろうから、僕は
奥州の領地が気になると言ってみたら政宗様は口に笑みを浮かべる


「……政宗様…?」

「竜の巣だ…小十郎、構わねえだろ?」
「…せめて城の付近までなら、と言っておきましょう」





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