〜尊いし眸〜

□十弐章
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「……僕は…」

「……当然だろう…お前の居場所は此処だ…
誰が逃がしたりするか…手放したりするかよ」

「…!!……、……」


 そう言うと政宗様は小十郎さんに米俵を担ぐように
抱き上げられていた僕の頭を撫でて笑みを向けてくれた

 不敵で面白さを交えて、相も変わらず
……これからを楽しみにしているかのような

 多分…そんな笑み…。



「……政宗様の仰る事に二言は無い、良く覚えてろ」

「………はい…」


 三人で端から見れば和やかに話が纏まった…だが、そんな最中。



――ヒュンッ…
「お取り込み中、失礼…そちらさんの話…終わったよね?」

「!……猿飛…」
「相も変わらず……武田で何か言われたか?」

「……佐助さん」


 唐突に現れたのは迷彩服が印象的な忍、猿飛佐助、その人。


「ご明察〜……もう苦労したよ、躑躅ヶ崎館にいきなり
豊臣の小勢が情報収集に押し掛けてくるんだから、そっちは…
軽度みたいだけど聖ちゃんのその怪我は一体どうしたの…?」
「……、……」


 武田側でも、やはり豊臣との衝突はあったのだろうか…
佐助さんからの話にしてそれ程、被害は甚大ではなさそうだが。


「Ha 猿にまで言われちゃ、この独眼竜も形無しだな」

「俺様が聞きたいのはそう言う事じゃないんだけど」


 少なからず、佐助さんは良い顔をしてはいない
しかもそれを向けているのは政宗様と小十郎さん…。


「……聖、立てるな?」

「…はい……」

「…猿飛佐助…お前に一つ問う…豊臣の軍師、竹中半兵衛は
大坂城で未だ織田政権がある真っ只中に独断で
聖と接触した…しかも、その時に普通なら捕まえる余裕も備えて
捕獲の為に連れる筈の部下は居なかったらしい…勿論
聖も逃れる為の部下は居ない…奴の力量はまだ知らねぇが
『小鳥の君』として見て知った上、最後は聖を逃がした……お前なら…どう見る?」

「!?……。へぇ、そりゃ俺様から見てもすっごい
難問かもね……でも…言うなれば、敢えて逃がした…かな」

「……やはり…それが近いか…」


 個人的な疑問を問うは小十郎さん
聞く佐助さん、しかし双方に答えなど無い

 あればこんな事にはならない



―――…やっぱり、この原因の全ては『自分の存在』



 そして未知なる存在が各国武将に対して
如何様に扱えるのか、どの様な価値があるか…


『今の天下の為』の道具となるのか
…今の僕には、もうそれしか考えられない…。



 僕を奪えば、僕の友も奪えるだろう…
だけど、奪おうとすれば周りを傷つけるのだろう。


 また、再び…奪われる……そんな……嫌だよ…。


「……、…さす…け…さん…信玄、様や幸村さま
…心配せずとも…大丈、夫なん…ですよね………」

「!……聖ちゃん……お館様や旦那の心配なら全然大丈夫、それよりも
…聖ちゃんが怪我をするなんて……ごめんね…痛かったよね?」






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