薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜

□七,弐
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「ヘイ、雑魚共!光栄に思うんだな
てめえらとは、このオレ様が遊んでやるぜ!」

「銃!?…駄目だ、伏せろッ!」


 突然張り上げられた声、一瞬、今までの
長州勢の様子や雰囲気が明らかに一転され、言うが早いか
その者は引き金を引くだけで人を簡単に殺せる銀色の無機物

―――拳銃…否…この時代ではまだ鉄砲とも言うか
それを掲げていて、俺も無我夢中で拳銃を
向けられてる者に声を荒げたが…間に合わない。


――ドォンッッ!!


 直後、聞き慣れた甲高い銃声が公家御門の前に響き渡る

「な、何……!?」

 銃弾を直に食らった役人の一人は
何が起きたか分からない悲鳴を上げて、倒れた


 嗚呼、即死だ…アレでは。

 当たり所は心臓に近い、狙ったんだ…彼は確実に殺す為。



「なんだァ?銃声一発で腰が抜けたか」

「……間に合わないな…」


 彼は足を止めた役人達を忌々し気に見回して顔を歪めた
…役人の皆も大勢であるにも関わらず怯み怖じ気づいている

 目の前の彼と違って…怯みも見せず
拳銃を構える彼には雰囲気すら
人に恐怖に至らしめるようだ…。


「遊んでくれるのは結構だが……お前だけ
飛び道具を使うのは卑怯だな」

「……援護します左之さん、一人で拳銃相手は厄介です…」
「…有りがてぇぜ…」

「縁さん、原田さん……!?」


 心配する声を上げた千鶴ちゃんには
大丈夫だと一旦視線を送った後、間合いを詰める
左之さんに合わせ俺は、彼が手に持つ
拳銃とは逆方向の素手側にて、間合いを合わせた。



「はァ?卑怯じゃねえって、そっちこそ
長物持っている上に二人がかりじゃねえかよ?」

「ですって、左之さん」

「んじゃ…お互い様だな」


 双方、にやりと挑発的な笑みが浮かび…それが合図

――ヒュッ……ダッ

 唐突に振るわれた槍の切っ先は鋭く
宙を切り裂いたが相手側は紙一重で槍をかわした


「…てめえは骨がありそうだな…にしても
真正面から来るか、普通?」

「小手先で誤魔化すなんざ戦士としても男としても二流だろ?
だが、変わりにもっと器用な
誤魔化に長けた怖ーいお医者様なら居るぜ?」

――…ス…ト…
「!……、へぇ…」


 左之さんの淡い笑みと知らせがサイン…
俺は敵の背後に回り刀ではなく鋭いメスを
後首筋に突きつけた…。さっきの槍の一撃は囮

 左之さん自体は本気の真正面みたいだったが
生憎、俺は血腥い場所に長く居れば正常で
居られる自信も無い、何を言われようが気にはしない。



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