薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜

□七,壱
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「……あんたは新選組に仇をなした。
俺から見れば、平助の敵ということになる」

「…しかし、今の私には君達新選組と戦う理由がありません」


 何時もは冷静な一にしては珍しい行動だ
…その声音は怒気と言った方が正解か…
だが目の前の薩摩藩の人間であろう彼は穏やかな口調の侭

 なんの動揺も情も含まれてはいない…

 勝手な推測になるが今の一は完璧に彼を敵視
…しかし敵視されてる薩摩藩の彼は敵視はおろか戦う気は無いと。


「……、あの…縁さん…」

「…………」


 傍観に近い傍目でいたら千鶴ちゃんが静かに
俺の背後に居て心配そうに一達の様子を心配していた
……一の事だから多分考えあってだろうが
千鶴ちゃんを心配させるのは戴けない…そんな、状況かな。


「大丈夫です…」
「…ぁ……」


 なるべく微笑みを浮かべながら彼女の頭をひと撫でしつつ
あんまり長くこの状況を継続されたくないので無粋だが
一に近寄り、刀の柄を握る彼の手の甲に掌を添えた。


「……一…取り敢えず刀だけは先に納めておきましょうか?
事柄…一にその気がなくても皆さんの動揺は誘います…」

「………分かっている。俺とて騒ぎを起こすつもりは無い。
あんたらとは目的を同じくしている筈だ。だが侮辱に侮辱を
重ねるのであれば我ら新選組も会津藩も動かざるを得まい」

「…………」


 一は素直に俺の言葉に応じ刀を納めてくれたものの
後半の釘刺す物言いには俺もそれを否定は出来ず
薩摩藩の彼に視線を向ければ、納得か了承かの素振りで深く頷いた。


「此方が浅はかな言動をしたことは事実。
この場に居る薩摩藩を代表して謝罪しよう」


 薩摩藩の彼の言葉に一は静かに頷いたが
それでは終わらずに俺までに
頭を下げてきたので静かに頷き返した

…上手く纏めたものだ…。


「私としても戦いは避けたかった、そちらが
退いてくれた事に感謝する…私は天霧九寿と申す者だ。
次にまみえる時、互いが協力関係にあることを祈ろう―――特に君とは……」
「?……」



(浪神鬼とは…やはり戦いたくない…)


 天霧九寿と名乗り終えた後

 最後に付け加えられた言葉が俺に示されたがそのまま彼は
小さく何かを言って俺達に背を向け…
薩摩藩士達を掻き分け隊列の奥へと消えて行った。




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