〜尊いし眸〜

□十章
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 リーゼントな伊達軍の人の言葉に二人は首を返し
…何だか政宗様と小十郎さんの様子が変わった…空気が痛い。



「……直ぐに戻ってくる、成実も俺について来い」

「おうよ!」

「綱元は聖を頼むぜ?口が上手いお前なら、何が来ても誤魔化しが利くだろ?」

「仰せの侭に、承知」


 それは…陣営まで…辺り一面が稲妻でも帯びているかのよう。


「………政宗様…」
「……、心配すんな…ちょいとばかし威嚇してくるだけだ
…それで敵が逃げてくれりゃあ…それまで
何てことはねぇ…絶対に、綱元から離れるなよ…」

「…僕も……。いえ…戦う可能性は…」

「…相手次第だ…聖が心配する事じゃねぇ…」


 心配させまいと向けてくれた、その笑み、だけど
政宗様は小十郎さんと成実さんを引き連れて陣の外に出て行った…。


「……政宗……様…」

「聖、大丈夫ですよ…政宗様の御身ならば心配は御座いません…"伊達が双璧"…武の成実、智の景綱も着いてらっしゃるのです、貴方に何も非は無い…政宗様が望む通りに待っていましょう…私が貴方を守りますからね」

「綱元さん……すみません」


 どうやら呟きは言葉として
出ていたようで心配をかけたようだ…
僕も弱音を吐かないで、しっかりしてないと。


「…っ…ゲホッ、…」
「!…大丈夫ですか…?」

「申し訳ない…ですね…ゲホッ…ッ、私が…聖を護らなければならないのに
……政宗様まで、もしもがあれば…それこそ私はどうにかなりそうだ…」


 主君を思うは最もな事、やはり政宗様と共に行けなかったのは
余り良いと思えた事ではないのだろう
それに調子が悪くなり始めた綱元さんの手を握った


「……大丈夫…ですよね…政宗様は
とても素晴らしい家臣に恵まれていますから…」

「…おや……それは私も含まれているのですか?」

「はい…綱元さんだって政宗様が信頼する伊達三傑の一人
"吏の綱元"…国を支えるには綱元さんの様な人は必要です」

「!……まさかそのような…いや…ありがとう」


 少し驚いたように目を見開く綱元さんには
微笑みを浮かべながらも、僕は彼の事も考え政宗様達が出て行った
その場所を暫く見据えたまま渋々帰りを待つ事にした…。







* * *

――――――…キュー…キュー…

「!……綱元さん…何か…聞こえませんでしたか?」

「?…いえ…私には…夜獣か、何かでしょうか?」


 どうやら綱元さんには聞こえてなかったようだ
ならば……まぁ、動物には違いない声だった



 小さく…『助けて…』とは勘違いだったのだろうか……。







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