〜尊いし眸〜
□仇章
4ページ/6ページ
一瞬、聞き間違えたかと思う程に驚いた……その言葉。
「……どうした、聖?そんな驚いたような顔して…」
政宗様は『帰るぜ』と僕に言ってくれた
…とても懐かしい、言葉を聞いた気もした
帰れる場所が僕にはあったのか…?ずっと独りだった僕に。
「……僕なんかに…帰る場所が…あったん、ですか…?」
「Ha 何を言ってやがんだ、在るに決まってんだろ?」
「……小鳥は一度外の世界で迷っちまったら頭まで迷子か?」
「…ぁ……そ…の…」
一瞬思考が停止したが、政宗様が頭を撫でてくれてハッとし
小十郎さんは言葉に似合わず優しく微笑んでくれていた…。
「俺がどれだけ苦労して…忍や部下を使ってまで迷子の
little birdを探したと思ってんだ…滅茶苦茶、心配したんだぞ…」
「…その間、暴れる政宗様を宥めるのも苦労したりな?」
「!……」
「小十郎、どういう意味だ…」
「さて…何の事やら…」
穏やかな時が流れた一瞬、何だか何時も通りな二人
―――…良いのだろうか……この温かい人達の所に居ても…。
* * *
「聖、今度、甲斐に来る時は遊びに来るつもりでいると良い、無論困った事もあれば力になろう」
「俺様も大歓迎〜ってね」
「はい、お館様、佐助さん、ありがとうございます」
「お待ちしておりますぞ聖殿!勿論伊達軍の皆様方も
是非来てくだされ!この甲斐、武田が盛大に持て成しをさせて頂く所存!」
そう言うと伊達のみんなは歓声を上げた
昨日まで武田軍や真田軍の人達とはピリピリしていたけど
案外打ち解けるの早い…意外とフレンドリー?。
「聖、挨拶はそれくらいで良いだろ?奥州までは遠いんだ早くこっちに来な」
「…あ、うん……って、政宗様、僕…
馬は見たことあっても馬上経験はないのですが…」
武田の皆様方とお別れを惜しみつつ
目の前で待機する伊達軍の先頭が政宗様の元へ
駆け寄るが帰宅の交通手段は時代故に当然
馬さん×に何頭?。
ブルルッ、と馬ならではのうるうるとした
ぱちくりなお目々で僕を見て…逞しそうな子ばかり…。
「っと…。安心しろ、誰も一人で乗れなんて言ってねえよ」
「聖、上げるぞ」
「っぉわ!?」
「Thank 小十郎。little bird 次回は可愛げに鳴いとけよ?」
「ぇ…いや…あの…」
後ろから小十郎さんに、ひょいっと
抱き上げられると、続けて政宗様に手渡され
僕は見事に馬上出来た、何時もなら
「小十郎」とか一言言う主従なのに…前置きは必要ですから
兎も角、政宗様と二人乗りになる。
。