〜尊いし眸〜

□仇章
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「…あ…すみませんちょっと…安心して…」

「む…安心……?」

「うん…さっき視線を……いえ…昨日の騒ぎの事も
あったから、嫌われたかもと……不安になって」


 不安は本当…後は、はぐらかしだ…左目を見て
害した等聞ける筈もなく、嘘な笑いで誤魔化していた
…昔から人の顔色を窺っては早とちる事もある…悪い癖…。


「ふ…深くは…追求…致しませぬが、そ…そそ
某っ…聖殿を…き…嫌いになど…っ、なれる筈がござらん!」
「!?…」


 だが、急に幸村さんが此方に振り向いたと思ったら
両肩をガッシリと掴まれ、僕はビクリと震え上がせてしまうが


「むむ、寧ろ…某は…"友"である聖殿の事を
知れた気がして…聖殿の友も知る事も出来た……その…」


 その中に含まれた"友"と言う言葉が…心に響いた


「……幸村…さん…」


 何故だか…やはり幸村さんの様な人だから
嬉しいと感じて目の前の人を確かめたくなった


「?! あ、ああ、あの…聖殿…」


 だから、僕の肩を掴んでいた彼の片手を
両手で掴んで…無意識に僕の頬に寄せている


 癖に近い…動物と触れ合う時の癖…
相手を知りたくて肌を触れ合わす、温かさを知る
蒼空の時は何時も互いに擦り寄っていたから…分かり合う


「………っ…」
「……聖殿…?」

「…幸村さんは…とても温かい人です…温かい焔。
……これからも…"僕の友達"で居てくれますか?」

「!?、もっ…もももっ…も…勿論にございまするぞっ!!」


 知りたかった、今を生きている
大切な友達に成りうる彼の温もりをこの肌で…


「ありがとう…幸村さん…僕…嬉しいです……本当に…」

「?!…嬉しいでござるか?某は聖殿を喜ばせられたのか…?」
「はい……心から…」


 嬉しいと…本当にそう思えたから
素直に頷いたら幸村さんは突然俯いては震えだす


「…や……や……やや…っ。やりましたぞおぉォォォ!お館様あぁァァァァ!!聖殿が喜んで下さりましたぞォォォォ!!
――ドドドドド…


 感動交えた大きな歓声を響かせながら何処かへ走って行った
いや、何処かではなく多分、間違いなくお館様の元だろうか




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