〜尊いし眸〜

□七章
4ページ/7ページ







 そう言う猿飛は俺の腕の中で眠る聖の額に手を添えた
…本当なら、もう此処でコイツに一発くれてやりてぇが……

 生憎だ…この猿も分かって近づいたのだろう…
聖が居るから俺も無粋な真似は出来ない。


「…そんなに険悪な顔しなさんなって……その薬は即効性にも
長けているから―――ほら、さっきよりも呼吸が穏やかになってる…」
「…、…………」

「…thank …once admit…」

「?…それって、どういう意味?」

「……二度は言わねえよ」


 少しばかり気になったようだが後に諦めた…
コイツから貰った薬のお陰で確かに聖はマシになったから

 一応は認め、感謝してるが…やはり
拐かした事に関しては気に食わねえし、許せねぇ。
コイツに礼なんぞはこれっきりだろう…




『……い………ゃ………も、……ぼ…く…っ……』
「聖…?!」

「!……、悪い夢でも、見ちゃってんのかな…」

「…聖…」


 また突然、聖は掠れた呻き声を出し頭を左右に振り悲愴で苦しそうに


『ゃ………だ………み…、…で………こん…な……っ………』


「!……旦那、あまり良い…状況じゃなさそうよ?」
「っ!!…聖……聖っ!起きろ!」


 何かを求め、縋るような様子で傷が目立つ白い手が宙に彷徨う。



『ど………こ………"蒼空"』


――ガタガタッ…ガタンッッ!!
―――ビュウゥゥゥゥ!!


「「!!?」」
「うわっ!…何、突風!?」


 聖の声は小さく掠れた侭…だが、俺達には
ハッキリと聖が蒼空と言う名を言葉にしたのを聞いた

 その瞬間に、同時にだ…。


―――バサッ、バサッ…


「……、政宗様…」
「Ah……こりゃ…随分と…Bigなものが降り立っちまった…」


「何か…ヤバそうだね………俺様は急いで大将らに報告しに行く
…竜の旦那達は聖ちゃんをしっかり宜しくね…」



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ