〜尊いし眸〜

□七章
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「…Shitッ…仕方ねぇか………小十郎…頼めるか…」

「承知……。聖、起こすぞ……頑張って飲んでくれ…」

「…っ…ぁ……はっ…ぁ……ぁ…ァ……」


 熱を持った聖の背中を支え、肩を抱えるよう抱き起こすと
聖は僅かな衝撃でも苦しみを上げる、小十郎は
猿飛から貰った竹筒に入った薬を飲ませようとした……が。


「…ぅく…ぁ…、ぅ…ゴホッ、ゴホッ!!ァ……は…っ」
「!……駄目です政宗様…息が乱れてる所為で…これでは上手く喉を通りませぬ」


 確かに、聖の呼吸は熱に膿まれ荒い…小十郎の聖に
薬を飲ませる態勢は間違ってはいない…だが聖が意識を失った侭
熱で呼吸をも乱した侭だから口から零れ落ちるばかり…。


―――…クソッ…どうしたら。



「……はぁ、わかってないねぇ、双竜の旦那方は…
自らの力で薬を飲めない重傷者にしてあげられる
そうと言いや…他に方法はコレしかないっしょ〜?」

「…………」


 突然の猿飛の言葉、コイツは自分の口を
指差しながら、次いで流れるように聖の方へ向けた

 この意味はつまり"口移しで飲ませる"だ。


「猿飛…てめぇ、ふざけ」
「おっと…誤解しないでよ、俺様はふざけている訳でもないし
旦那達をおちょくってるわけでもない…コレでも
口移しってのは立派な看病だぜ?今みたいに息を乱した侭じゃ
聖ちゃんは上手く薬を飲めないし、このままじゃ
この子はずっと苦しむ一方…だけど口移しなら息を乱した者でも
乱した呼吸に合わせて薬を飲ませてあげられる……、そうでしょ?」


 猿飛の言う事は全てが正論だ、息を乱した侭では
今の聖に薬を飲ますのは確かに困難だろう

 だが…口移しならば、相手の呼吸に合わせて与えられる。


「チッ…正論か………政宗様、如何なさいますか…」
「…聖ちゃんなんだから、迷う事も無いでしょ〜…ぁ…なんなら俺様が代わりに…」
「……………」


「そ…そんな顔しないでよ、片倉の旦那〜…ほんの冗談だからさ、冗談」


 小十郎と猿飛で揉めた後、最終的には
視線が俺に向けられた……obviousだ

 俺が決めろという事なら、決まってる

 双竜のものと言っておきながら…小十郎には悪いがな。


「小十郎…」

「承知しております」

「……良いなぁ、竜の旦那……役得…」




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