薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜

□七
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 伏見奉行所前


――…新選組が局長、近藤さんの号令…
会津藩の正式な要請により総員出陣命令が下り
忙しなく時間が過ぎ去ったが、その合間に
俺は又も運悪く発作が起き仕方無く自分で済ませようにも
隊士から伝って気付いた一が来てしまい、彼から血を貰ってしまった。


「伏見奉行所…か………。……一…体調は」

「問題無い…己でも不思議だがな。……縁、お前は」

「はい、俺も問題ありませんよ…一のお陰でね…」
「…そうか…」


 皮肉にも、躯が楽になった感覚に溜め息しか出せなかった
勿論、己の血の効能も不幸中の幸い。
――…何はともあれ総員出陣の為、何とか動ける
俺と一は今に至って共に出陣は果たせ

 今は目の前で門番をしている役人に近藤さんが近付く所だった。


「会津中将松平容保様お預かり、新選組。
京都守護職の要請により馳せ参じ申した!」


 松平容保の名を聞いた時だけは門番の役人は少しばかり
眉を動かして反応したが後の事は訝しるだけ…


「要請だと……?その様な通達は届いておらん」
「――え?」


 役人の言葉に呟きを漏らした千鶴ちゃん
…それは俺達の元にも届き、ふと一が吐息と共に小声を零した。


「内輪の情報伝達さえ、ままならんとは戦況に余程の混迷を呈したとみえる」

「…では、どうやら俺達は副長の言う通り後手になってしまったようですね…」
「……はぁ…」

「……それって、幕府側の勢力が長州側に押され気味だって事ですか?」

「それは…はっきりとは言えませんね……」
「……しかし敵方に翻弄されてはいるのだろうな」

「……………」


 小声での会話の中、所司代は守護職の部下に当たる
守護職は会津藩、所司代は桑名藩…早く言えば
上司と部下で幾ら同業でも藩が違えばなにかと隔たりも出て尚
敵方に翻弄されてるとなれば揉め事も起きてないとは言えない

 今だって会津藩から総員出陣命令が下ったにも
関わらず、この伏見奉行所には通達が届いてない…。


「……これでは駄目そうですかね…」

「…多分な…」


 これでは会津藩と桑名藩の関係は、状況がたかが知れる
そして、さっきから門番の者を見ても分かる…新選組を見る目


「しかし、我らには正式な書状もある!上に取り次いで頂ければ―――」
「取り次ごうとも回答は同じだ、さあ、帰れ!壬生狼如きに用は無いわ!」
「っ……!?」


 人を見下した目…気に食わないな…自分勝手な人間は本当に。
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