薄桜鬼〜孤独な彼岸花〜

□七
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「……、残念だが…俺の所為で縁には怪我をさせちまった」
「?!い"ッ!副長!痛いですから!そこが深っ!?
ちょっ…握らないで下さいってば!っい"だだだッ!!」
「「!!?」」


 なるべく心配を掛けたくなかったから平然を装ったのに
副長は前置きなく強く怪我をした傷口を握り上げてきた…

 いくらなんでも酷いよ、この人。


「…仲間には、やはり隠し事はしない方がいいぜ
早く救護隊の連中たちに診てもらった方が良い」

「…〜〜っ……。言ってる意味と…やってる意味が
全然…一致しないのですが…困りましたね…」
「だ、大丈夫ですか…?」

「……はい…大丈夫です」


 千鶴ちゃんと島田さんに心配、掛けてしまったじゃないか。


「……せめて、一太刀くらい縁の代わりにやり返してやりたかったんだが、途中で薩摩藩の横槍が入りやがった…」

「…薩摩藩の横槍、ですか?」

「風間……、風間千景とか言ってたな。あいつは薩摩の人間らしい」

「薩摩藩の人……?あの人…、風間さんは上の指示を無視してたって事ですか?」


 独断行動…それも長州の誇りの為の足止めなんだか
そんな事をする為に動くような人物には見えなかったがな…。


「多分な。薩摩の連中も迷惑してるんだろうに
風間には強く言えないらしい」

「…………」

「その風間とやらは薩摩の中でも
相当に優遇された立場があるんでしょうな」


 彼の立場がどういった境遇にあるかは知らないが実力は確か…あの並外れた身体能力…普通の人間とは言い難い。


「奴は身分の上に胡座を掻いてる甘ったれだ。
手柄なんざ、欲しいに決まってるじゃねえか」


 副長の率直な本音には首を傾げも手柄を欲するなら
何の得もない長州の足止めをするのだろうか…。


「副長…手柄が欲しいなら…今から死に逝くとする
長州の為に新選組を足止めなんてしますかね…?
普通なら…俺達に加勢した方が手柄になりませんか?」

「……………」


 俺も副長の言葉には風間との行動の辻褄が合わなくて
疑問を投げかければ眉をしかめた…千鶴ちゃんも島田さんも。

 分からない事だらけ…

――ダッダッタッタ…

 そんな時、新八が隊士を率いて山から下りて来た彼は
俺達の姿を見ると安堵の表情を率直に浮かべていた


「……上に行って見てきたんだけどよ
長州の奴ら…残らず、切腹して果ててたぜ」

「あ……」

 しかし、直ぐに真剣な表情に変わり
新八から発せられた言葉は切腹と言う二文字。



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